SNAREタンパク質は、小胞の膜融合の過程を仲介するタンパク質である。LjSYP132sは、ミヤコグサQa-SNAREの一つであり2つのmRNAs (LjSYP132aとLjSYP132b) を選択的スプライシングにより生成する。十川らは、この2つのスプライスバリアントの機能を明らかにした(1750-1759ページ)。ミヤコグサ根粒菌Mesorhizobium lotiを感染させると感染初期には2つのバリアントが誘導されるが、成熟根粒では根粒菌を取り囲むペリバクテロイド膜でLjSYP132aが主に発現していることを明らかにした。RNAi法によってLjSYP132aやLjSYP132bの発現を抑制させた形質転換体の毛状根では感染糸の伸長が抑制された。さらにRNAi-LjSYP132bの全身性形質転換体では花粉管伸長と種子形成に異常が観察された。以上をまとめると、LjSYP132sのスプライスバリアントは感染糸の伸長や根粒形成に関与しており、LjSYP132aは成熟根粒で強く発現していることから、根粒内のペリバクテロイド膜での物質の交換に関わっていると推測される。一方、LjSYP132bは花粉管伸長や種子のプラズマメンブレンでも発現し、種子の栄養輸送に関与していると思われる。
表紙は、DsRed 標識された根粒菌を感染させたミヤコグサの根と根粒(上)と、ミヤコグサの花(中)、RNAi-LjSYP132aの形質転換毛状根 (下) の画像を示している。画像は香川大学農学部の十川 蒼氏からの提供。
PCPギャラリー