ジベレリン(GA)は、Gibberella fujikuroiの感染で引き起こされるイネ馬鹿苗病の原因物質として、約100年前に日本の植物病理学者により見つかった。その後、植物学者らの精力的な研究により、植物ホルモンとしてGAが与える植物の様々な生理作用が明らかになった。さらに、20世紀後半に展開された「緑の革命」に貢献したイネやコムギ品種の半矮性の原因がGAの合成や受容の阻害であったことは、GAが植物生理学の研究対象だけでなく、農業的価値を持つ物質でもあることを示した。今月のPCPは松岡信氏と中嶋正敏氏をゲストエディターとして迎え、現在でもなお多くの植物学者や農学者の興味を集めているジベレリンを特集した。この特集号では、GAの合成・分解酵素の進化、GA輸送やシグナル伝達を制御する機構、「緑の革命」後の収量向上に向けた戦略など、2つの原著論文と8つの総説論文を収録した。
表紙のイラストは、植物体内のGA量の変動により植物の成長や収量を変化させることが可能であることを示したもので、Chengcai Chu氏(中国科学院・遺伝学発生生物学研究所)の提供による。
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