パンコムギ(Triticum aestivum)のゲノムアセンブリは巨大なゲノムサイズと異質六倍性ゆえに困難であった。本号で清水、Copetti、岡田ら(pp.8-27)は日本を代表する品種農林61号の染色体スケールのゲノムアセンブリを他の10+コムギゲノムプロジェクト品種のアセンブリと共に解析した。農林61号ゲノムの他の品種との特徴的な違いの一つとして、フロリゲン遺伝子であるFT/VRN3のコピー数多型と偽遺伝子化が挙げられる。このように本論文で報告した農林61号のゲノム配列はこれまであまり育種利用されてこなかったアジアのパンコムギの多様性を包括的な特徴づけに利用されるであろう。
表紙の写真は農林61号の根端分裂組織中の細胞の中期染色体の、局在型反復配列をプローブとした非変性蛍光in situハイブリダイゼーション像を示す。それぞれの染色体をpTA535(赤)、pTa713(緑)、pSc119.2(青)の3種の蛍光プローブで同時検出し、大きな核型の変化の有無を検討した。画像提供:村田和樹・那須田周平(京都大学大学院農学研究科)
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