ステート遷移は、二つの光化学系の励起バランスを調節する機構である。Light-harvesting complex II (LHCII)が光化学系間を移動することで励起バランスを保つと考えられてきたが、それに伴うLHCIIの葉緑体内分布の変化を可視化することは実現されていない。Zhangらは( pp.872-882)、独自に開発した励起スペクトル顕微鏡により生きたクラミドモナス細胞内のLHCIIに由来する蛍光成分の可視化に成功した。この技術により、顕微蛍光イメージの全ピクセルにおける励起スペクトルを迅速に取得することが可能となる。クロロフィル(Chl)-bはLHCIIにのみ結合するため、局所的な励起スペクトルはその場所におけるアンテナサイズの情報を与える。得られたデータの解析からZhangらは、ステート遷移によるアンテナサイズの変化を反映するChl-b成分の細胞内分布の変化が、可逆的に起こることを発見した。
表紙のイメージは、左から順に、全波長範囲、Chl-b成分のみ、Chl-a成分のみ、から再構成した蛍光イメージ、Chl-b成分/全波長範囲の比を取ったもの、を示している。ここで示した細胞は、異なる色の光を照射することで、ステート1へ誘導(下段)、ステート2へ誘導(中段)、ステート1へ再誘導(上段)された。イメージは、Xian Jun Zhang 氏(東北大学)から提供された。
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