Plant & Cell Physiology
2021 vol62 (9)
葉緑体に代表されるプラスチドには、窒素や炭素の主要なリサイクル源となりうるタンパク質が豊富に含まれている。葉緑体は、植物の発達過程や環境応答時にピースミールオートファジーにより部分的かつ段階的に分解されるが、関与する詳細な機構についてはほとんど分かっていない。石田ら(1372-1386ページ)は、新しいシロイヌナズナ変異体であるgfs9-5を同定した。gfs9-5変異体は膜輸送に関わる因子であるGREEN FLUORESCENT SEED 9 (GFS9)に欠陥があり、プラスチドのピースミールオートファジーの過程で生じるプラスチドボディー(PB)を異常蓄積した。gfs9-5変異体は、これまで達成が困難であったPB形成の直接的な観察を可能にすることから、プラスチドのピースミールオートファジー研究を更に進めるうえで有用な遺伝学的ツールになると考えられる。
表紙イメージは、明所で育てた3日齢のgfs9-5変異体の胚軸の微分干渉像(灰色の輪郭)と共焦点レーザー顕微鏡像を重ね合わせたもので、葉緑体ストロマにターゲットされるGFP(グリーン)で可視化されたPBが過剰に蓄積する様子を示している。クロロフィルの自己蛍光(マゼンタ)を示す葉緑体は、明るいマゼンタから白に見えるのでPBと区別できる。画像提供は石田宏幸氏(東北大学)。
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