カルタミンは4500年以上も前から世界中で使用されてきた天然赤色色素で,わが国においても「紅(べに)」の主成分として,着物染めに,また化粧品素材や食用色素として用いられてきました.カルタミンはベニバナ(Carthamus tinctorius L.)の花弁中で生成しますが,その生合成経路は明らかにされていませんでした.和氣ら(1528-1541ページ)はベニバナ花におけるカルタミン生合成の鍵酵素カルタミン合成酵素遺伝子を同定し,同酵素の特性を明らかにしました.明らかにされた同酵素の反応特性に基づいて,伝統的な紅製造プロセスに密接に関係するベニバナ花冠の赤色発現の分子機構を合理的に説明することができます.本論文に関するコメンタリー,鈴木(1506-1508ページ)もご覧下さい.
写真はベニバナの花冠で,完全に開花した状態では黄色から橙色を呈します.花冠は老化とともに赤味を帯びていき,しおれた状態で赤色を呈します(写真提供 東北大学大学院工学研究科 和氣駿之氏).
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