苔類の再生は頂端部の切除により誘導されることから頂芽優勢機構によって制御されると考えられてきたが、その分子機構はまだ明らかになっていなかった。石田ら(348-400ページ)は苔類ゼニゴケを用いて、頂端切除断片の切断面領域において内生オーキシン量が一過的に減少し、それがAP2/ERF転写因子LOW-AUXIN RESPONSIVE (MpLAXR)の発現を誘導することを明らかにした。MpLAXRは、シロイヌナズナにおいてシュート再生や腋芽形成に関与するENHANCER OF SHOOT REGENERATION 1/DORNRÖSCHENと同じクラスのAP2/ERFに属し、ゼニゴケでも細胞リプログラミング因子として機能する。これらの発見から、内生オーキシン量の減少が細胞リプログラミングを引き起こすという新たな概念が提示され、また陸上植物における幹細胞新生制御と頂芽優勢機構の関わりが示唆された。
表紙イメージは、細胞リプログラミング因子MpLAXRを異所的に過剰発現させたゼニゴケ無性芽である。EdUを取り込んだ核を赤色で示す。通常の発生過程では細胞分裂活性をもたない無性芽周縁部の細胞において、細胞リプログラミングが引き起こされ、細胞分裂が再開したことが示された(画像提供 京都大学大学院生命科学研究科 石田咲子氏)。
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