Plant & Cell Physiology
2023 vol64 (3)
植物は分化状態にある細胞から幹細胞を新生・維持したり、再生を行うなど、驚くべき能力を備えている。茎頂分裂組織や根端分裂組織に存在する恒久的な幹細胞は地上部や地下部の器官を創り出すが、器官や組織の再生は体細胞や配偶子からも起こることが知られている。一過的に幹細胞性をもつ細胞として、気孔を生み出すメリステモイドが知られている。最近の研究で、この気孔発生段階で細胞周期と細胞運命決定の間に複雑な関係性があることが明らかにされている。本特集号は、林誠氏(理研)、Ari Pekka Mähönen氏(ヘルシンキ大学、フィンランド)、榊原均氏(名古屋大)、鳥居啓子氏(UT Austin、米国)、梅田正明氏(奈良先端大)の5名のゲストエディターにより企画編集されたもので、植物幹細胞研究の最新の研究成果を紹介している(論説、林ら、271-273ページ)。
表紙カバーは、シロイヌナズナのメリステモイド細胞の動態を捉えたフィルムリールのイラスト(左:核の蛍光はマルチカラーの細胞周期マーカーPlaCCIを示す)、STEMIN1 を発現するヒメツリガネゴケ(中央)、そしてシロイヌナズナの茎頂分裂組織 (右上) と根端分裂組織 (中央右)[マゼンタ色の蛍光シグナルは分裂中の幹細胞(CLV3promoter:GFP)、緑色の蛍光シグナルはPIN-FORMED 1の発現をそれぞれ示す]、そしてシロイヌナズナのカルス由来の茎頂分裂組織 (右下:緑色の蛍光シグナルはWUSCHELの発現を示す)の写真を示している。[画像提供 左から右下の順に時計回りにArvid Herrmann氏(UT Austin、米国)、石川雅樹氏(基生研)、伊藤寿朗氏(奈良先端大)、梅田正明氏(奈良先端大)、池内桃子氏(奈良先端大)、表紙デザイン 高橋一誠氏(名古屋大学)]。
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