植物科学の進歩は、しばしば研究者の知的好奇心から得られる洞察から生まれるが、人間の能力の限界が新たな発見を妨げている可能性がある。この問題を解決するための一つの有力な手段は、人間が持つ知覚や情報処理能力を機械やコンピューターの力で適切に拡張することである。本特集号では、人工知能や、新規な光学デバイス、さらには人間拡張工学の応用を通じて植物科学の研究を推進しようとする10編の原著論文を紹介する(NakajimaらによるEditorial を参照)。例えば、ある種の動物は人間が知覚できない波長域や偏光の情報を認識し、これらを摂食やストレス回避あるいは生殖行動などに活用することが知られている。このような「見えない表現型」の研究における新たな発見を加速するため、Balandraら は反射光に含まれる多波長・偏光の情報を容易かつ網羅的に収集できる携帯型のイメージングシステムP-MIRUを開発し、これが花の色の時間的遷移や葉の表面の微妙な表現型の違いを容易に可視化できることを実証した。
表紙画像は、P-MIRUシステムの構成図(前景)と、P-MIRUを用いてユウゲショウ(Oenothera rosea)の花から得られた広範な波長域(横軸)と偏光域(縦軸)のスペクトルイメージを示す。
【画像提供:Alfonso Balandra、ドル有生氏(東京大学)】
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