性分化は、陸上植物をはじめとする多くの真核生物において、生殖と遺伝的多様性をもたらすための重要なプロセスである。苔類ゼニゴケ(Marchantia polymorpha)の性分化は、雌性化を促進する転写因子をコードする遺伝子FGMYBと、その逆鎖において転写される長鎖非コードRNA遺伝子SUFからなる単一の遺伝子座によって制御される。SUFはFGMYBの転写を抑制することにより雄性化を促進するが、その分子基盤は不明であった。今回、梶原ら(338-349ページ)は、CRISPR/Cas9によるゲノム編集を用いて、FGMYB-SUF遺伝子座全体を欠失した変異株を作出し、様々なコンストラクトを駆使した機能相補検定により、FGMYBの転写抑制には、SUFの転写産物ではなく、転写のプロセス自体が必要であることを見出した。この成果は、陸上植物の生殖における長鎖非コードRNAの重要性を示すものである。久永哲也氏(319-321ページ)によるCommentaryも参照されたい。
表紙の写真は、生殖器托において雌と雄のモザイク状の性分化を示すゼニゴケ雌変異株である。写真提供:岡橋啓太郎氏、河内孝之氏(京都大学大学院生命科学研究科)
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