すべての陸上植物の表皮には、一対の孔辺細胞に囲まれた気孔が存在する。孔辺細胞では独自のシグナル伝達機構がはたらき、さまざまな内因性および外因性因子に応答して気孔の開閉が調節されている。しかし、そのシグナル伝達機構の一部には、依然として不明な点が残されている。今回、Ohらはケミカルバイオロジーの手法を用いて気孔開口を誘導する新規化合物PP242を同定した。解析の結果、PP242の標的の一つがB3クレードRaf様キナーゼであり、これによりPP242はアブシジン酸の初期シグナル伝達を強く阻害し、気孔開口を誘導することが明らかになった。これらの知見は、気孔開閉の調節に関わるシグナル伝達経路間のクロストークについての理解を深めるものである。
表紙画像は、新規化合物PP242により開口した気孔を示している。暗処理したCommelina benghalensisの背軸側表皮を50 μM PP242でおよそ3.5時間インキュベートした後、液胞染色試薬である10 μg/ml Neutral Redでおよそ1時間染色し、光学顕微鏡で撮影した。 写真提供: 王 愛里(総研大、基礎生物学研究所)
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