サイトカイニンは植物ホルモンの一種で、植物の生長・分化に重要な働きをしています。今までサイトカイニンはAMP (adenosine monophosphate) のN6位にイソペンテニル基が結合することにより合成されると信じられてきました。ところが大阪大学の柿本氏は本号677~685ページでサイトカイニンの新たな生合成経路を提案しています。柿本氏はバクテリア、真核生物や植物病原細菌のtRNA isopentenyltransferase あるいはサイトカイニン生合成イソペンテニル化酵素に似たたんぱく質をコードする遺伝子をシロイヌナズナのゲノムから探し出しました。この結果、植物特異的な isopentenyltransferase のグループの遺伝子7つを同定しました。この中の一つ、AtIPT4を詳細に調べた結果、AtIPT4は dimethylallyldiphosphate: ATP/ADP isopentenyltransferase であることが判りました。この酵素は今まで報告されたことがない新しいタイプの酵素です。この酵素は、dimethylallyyldiphosphae をAMPではなくADPかATPに結合させます。この結果は、植物のサイトカイニン生合成のキーステップはATPまたはADPのイソペンテニル化であることを示唆しています。
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