多くの生物において、生物時計により駆動される概日リズムが様々な高次機能を制御していることはよく知られている。高等植物においても、開花時期の制御、葉の開閉、気孔の開閉など実に様々な高次現象が時計により制御されている。我々は、シロイヌナズナにおいて、APRR1/TOC1ファミリーに属する５種類の遺伝子の発現が APRR9 → APRR7 → APRR5 → APRR3 → APRR1/TOC1の順に規則正しく概日リズムを刻むことを見いだし、これらの因子が時計の分子機構と深く関連していることを一連のPCP論文で報告してきた （APRR1/TOC1五重奏：図下）。
今回我々は、新たにAPRR5を構成的過剰発現する形質転換植物を作成した。シロイヌナズナは長日植物であるが、APRR5構成的過剰発現植物は日長にかかわりなく早咲きの性質を示した （中図）。さらに、初期光形態形成においても顕著な表現型を示し、赤色光に超感受性となった （上図）。同様な表現型は、以前に報告したAPRR1/TOC1構成的過剰発現植物においても観察された （上図）。
これらのことから、APRR1/TOC1だけでなくAPRR5も、シロイヌナズナの時計分子機構、開花時期の制御機構、光形態形成機構を理解する無視できない重要な因子であることが強く示唆された。