ヒルガオ科アサガオ属 (Ipomoea) の中で、青色花を咲かせるアサガオ (I. nil) とソライロアサガオ (I. tricolor) 及び濃紫色の花を咲かせるマルバアサガオ (I. purpura) は花卉園芸植物として栽培化され、色々な色の花を咲かせる種々の自然突然変異体も分離されている。古文書などによれば、これらのアサガオ属植物では先ず白色花か紅色花を咲かせる自然突然変異体が分離されている。星野らは本号 (990-1001頁) で、紅色花を咲かせるアサガオの “ムラサキ” を含むmagenta 変異体、マルバアサガオのpink 変異体、ソライロアサガオのfuchsia 変異体は全てフラボノイド3'-水酸化酵素 (F3' H) をコードする遺伝子の変異体で、magenta 変異はナンセンス変異、pink 変異は 0.55kb のTip201 と名付けられたDNAトランスポゾンの挿入変異、fuchsia 変異は 1bp の挿入により終止コドンが生じた変異であることを明らかにし、さらにpink変異はF3' H mRNA のスプライシングやポリA付加に影響を与え、fuchsia変異はF3’H mRNA の分解を惹起すことを報告している。これらの変異体はいずれも F3' H 活性を欠いているが、各々の花の色調の違いは、花の色素アントシアニンの構成成分や主成分の濃度の違い、さらにもしかしたら花弁液胞のpHの違いなどのよるものと思われる。
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