高等植物の胚発生過程におけるシュートや根などの器官の形成は、それに先だって確立される頂端-基部軸、放射軸などの基本パターン基づいて行われると考えられている。イネ胚発生突然変異体には胚の器官を全く形成できない globular embryo (gle) 変異体が幾つか見いだされており、これらの変異体には放射パターンの形成能を欠失したものが含まれていることが予想される。放射パターン形成の分子機構を明らかにするため、筆者らはL2、L3層に特異的に発現する分子マーカーを開発し、これらの分子マーカーを用いることによりgle変異体の解析を行った。
gle変異体のうち、gle4変異体はL1の分子マーカーは正常な発現を示すが、L2、L3の分子マーカーは異常な発現パターンを示した。また、興味深いことにgle4の胚盤上皮細胞に由来するカルスは、形態異常を伴うものの再分化個体を形成することが可能であった (表紙)。
これらの結果から、GLE4遺伝子は胚発生過程における放射パターン形成、L2、L3層の分化に関与しているが、カルスからの再分化の過程における基本パターンの形成には関与していないことが示唆された。
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