アラビドプシス (シロイヌナズナ) を用いた分子遺伝学的研究によって、長日植物における花成の遺伝学的制御の概要が明らかにされつつある。それはジベレリン、長日、春化処理、自律的にそれぞれ応答する経路が、花成の統合遺伝子と呼ばれる、LFY、FT、SOC1遺伝子に集約された後、栄養成長 (VM) から生殖成長 (IM) への相転換である花成を促進するというものである (左図)。
これまでの研究は主に遅咲きになる突然変異体、つまりその野生型遺伝子が花成を促進するもの、を用いて大きな成功を収めてきた。今回我々の研究においては、これまでとは異なり日長感受性が低下し常に早咲きになる表現型を示すtfl2突然変異体 (右写真) を用いて解析を行った。その結果、TFL2遺伝子はFTの発現を抑制していることが明らかとなった。またTFL2遺伝子はヘテロクロマチンタンパク質 (HP1) と呼ばれるタンパク質をコードしており、ヘテロクロマチン形成や遺伝子のサイレンシングに関わっていると考えられる。これはtfl2が多面的な表現型を示すことともよく一致している。このようなクロマチン因子が花成に影響しているということが近年次々と明らかにされてきており、TFL2を始めとする花成の抑制遺伝子の研究によって、促進と抑制という拮抗した制御によって花成が正確に調節されるメカニズムが明らかにされつつある。
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