シロイヌナズナの生態型 Columbia (Col-wt) は Alternaria brassicicola の攻撃に対して過敏感反応および過敏感細胞死を誘導し、感染を阻止する。これに対してファイトアレキシン合成欠損変異体pad3 は活性酸素種の生成などの感染初期における過敏感反応は誘導されるが、菌の侵入を阻止することが出来ず感染が成立する。
本号 (377-387頁) で鳴坂らは約7,000遺伝子のシロイヌナズナ完全長cDNAマイクロアレイを用いて、A. brassicicola を Col-wt と pad3 に接種したときの応答遺伝子について解析を行った。さらに、サリチル酸、ジャスモン酸、エチレンおよび活性酸素種誘導化合物を処理して、経時的にマイクロアレイを行った。以上の結果から、pad3 は菌の攻撃に対して、ファイトアレキシンを合成できないだけでなく、Col-wt に比べて多くの遺伝子の発現が遅延または抑制されていることが明らかになった。また、病原菌の攻撃に対する植物の抵抗反応には複数のシグナル伝達経路が関与していることが示唆された。
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