アジサイは日本産の花木で、原種は青色である。19世紀にシーボルトの手によりヨーロッパへわたって育種され、青、紫、赤、ピンクなど様々な色を持つ西洋アジサイとして日本へ帰ってきた。アジサイの花 (厳密には萼片) の色は、酸性土壌で育てると青くなり、逆にアルカリ性土壌では赤くなると言われている。これは酸性土壌中ではアルミニウムが溶けやすく、萼に運ばれてアントシアニンと錯体を形成するためと考えられている。
一方、咲いてからの日数の経過によっても、その色は微妙に変わる。別名 「七変化」 花言葉は 「移り気」 である。アジサイでは、これだけの多彩な色がとても単純な構造のアントシアニン、デルフィニジン-3-グルコシドで発色する。なぜ、単一のアントシアニンから青、紫、赤が発色するのかについては、実はまだ詳しくわかっていない。アントシアニンがpHにより色が変わることは良く知られている。しかしこれまで、有色細胞のpHを正確に測定した例はほとんどなかった。
アジサイの萼片組織を見ると、着色細胞は向軸側の2層目にまばらに存在する。そこでこれをプロトプラスト化して、1個の細胞の色を顕微分光によって測定した後、同じ細胞の液胞pHを細胞内微小pH電極を用いて測定した。青色の細胞のpHは約 4.1、赤色の細胞では約 3.3であり、青色細胞が有意に高いことがわかった。アジサイの花色変異に、液胞pHの違いが大きく影響を与えることが明らかになった。
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