生体膜における水の透過は、植物生理学においても重要な研究課題である。しかし、水が高速で膜透過する分子機構は水チャネル (アクアポリン) と呼ばれるタンパク質が発見されるまで未知の領域であった。多くの植物において細胞膜の水透過率は極めて高いが、それは多量のアクアポリンの存在によって支えられていることが明らかになってきた。本号で須賀と前島 (pp.823-830) は、ダイコン (Raphanus sativus ) の細胞膜水チャネル (RsPIP) 6種類について、個別にそれらの水透過率を解析した。その実験のために、ダイコン水チャネル遺伝子を酵母で異種発現する技術とストップト・フロー分光法による水透過率測定のコンビネーション技術も確立した。得られた結果の興味深い点は、6種のうちのRsPIP1型3種については水チャネル機能がほとんどないということ、さらに、そのアクアポリン分子の開口部にあるアミノ酸残基を置換すると、水チャネル機能が倍増することである。逆に、水チャネル機能の高いRsPIP2型の、対応する残基を置換すると水チャネル機能は著しく低下する。これらがPIP1型とPIP2型を特徴づけるアミノ酸残基であることが明らかになった。
図は RsPIP1-3 と名付けられた分子の立体モデルについて、上から見た図 (水透過の穴が見える) と横から見た図であり、置換したアミノ酸残基 (Ile-244) を赤で示し、水チャネルに共通な Asn-Pro-Ala モチーフ (分子の中央部) のアスパラギン残基を黄色で示している。なお、この立体図はヒトのAQP1をモデルとしてホモロジーモデリング法により、著者らのグループの石川文義が作成した。
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