硫黄は主要必須元素のひとつである。土壌中の硫酸イオンは根の表皮細胞に局在する高親和型硫酸イオン輸送体により植物体内に吸収される。シロイヌナズナの高親和型硫酸イオン輸送体SULTR1;1 及びSULTR1;2 は硫黄欠乏によりmRNAレベルで正に制御される。本号において丸山らは (pp.340-345)、SULTR1;1 の発現制御について報告した。表紙の写真では、シロイヌナズナの SULTR1;1 プロモーター-GFP形質転換体の根毛が硫黄欠乏条件下において緑色蛍光を発すること、すなわち 「植物に硫黄が必要である」 というサインを示している。SULTR1;1 の転写レベルでの制御には、上流 3-kb のプロモーター配列が必須であった。著者らは、蛍光レポーター系を用いてSULTR1;1 の硫黄栄養に依存した発現制御にタンパク質のリン酸化・脱リン酸化が関与することを示した。タンパク質脱リン酸化酵素の阻害剤であるオカダ酸、カリクリンAの存在下では、硫黄欠乏によるSULTR1;1 の発現誘導が効果的に阻害された。阻害の効果はプロモーター -GFP形質転換体でも再現するものであり、この蛍光レポーターを用いた評価系は、生きた植物体を用いて硫黄栄養応答の制御因子を化学的・生物学的に解析する手段として有効であると考えられる。
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