佐藤公行会長(写真)

2002年1月
日本植物生理学会
会長 佐藤公行

 今年度から会長の役をお引き受けすることになり、責任の重大さを痛感しております。

 日本植物生理学会は、継続する会員数の増加で示されるように、いま大きく成長を続けている学会の一つです。これは、大学や研究所さらには企業などにおいて植物生理学の分野の研究に従事する学生や研究者の数が増加していることに対応しているものと思われますが、より本質的には、植物の機能に関する学問の深まりと広がりにその原因があると思います。植物を材料としたメンデルの研究で口火が切られた遺伝学の発展が、生物学に普遍的な基盤を与え、どちらかと言えば立ち遅れ気味であった植物の機能解析の分野にその影響が及んでいるのが現状であると捉えることが出来ます。学問としての基盤の確立すなわち体系化は、当然その応用分野における研究の展開と研究領域の拡大をもたらし、このことが逆に基礎研究に深まりを求めることになります。

 日本における植物生理学の基礎および応用の発展を促進することを主目的として設立された日本植物生理学会の役割は、このような状況のもとで、非常に重大であると思います。植物の機能に関する学問は、それ自身の学問としての深まりから来る可能性と社会の抱える現実的な問題から、エネルギー、食糧、資源、医薬品の開発、環境問題など、国家戦略として対応してゆかなければならない問題とも深くかかわるような事態に到達しようとしています。非政府組織 (NGO) としての学会は当然このような問題とは一定の距離を置くことになりますが、他方では、専門家集団を名乗る立場として、この国の植物の機能に関する学問を高いレベルに保つことに第一義的な使命があることは明らかであります。この立場から、年会およびシンポジウムでの充実した研究交流やより質の高い学会誌の発行などの活動をさらに活性化し、あくまでも知的好奇心を原動力とするバランスのとれた植物生理学の発展に貢献することが重要であると私は思います。しかし同時に、このことを実現するためにも社会からの支援が必要であり、また、この学問領域の持続的な発展のためにはすぐれた後継者の養成が課題となります。勿論、これらのことは学会発足当初からの課題でありましたが、日本における植物科学を代表する学会の一つとして大きく成長した日本植物生理学会がいま強く意識しなければならない任務であることと私は理解しております。また、前述のような大きな社会的な期待を背景に、国際競争と国際連携の下で進行する当該分野の学問の展開に対応して行くことも、“ポストゲノム” や “環境” で象徴されるような新しい時代の要請であることも明らかだと思います。

 本学会は、前会長杉山達夫先生の時代からこのような状況を強く認識し、一昨年度の将来構想の策定を受けて、昨年度は学会の社会広報活動や学会活動の長期計画などについて具体策の検討を行って来ております。今期を担当する私に与えられた役目は、疑いもなく、これらの対応策を現実的なものとして実施に移してゆくことにあると思います。また、このような問題に対応してゆくための学会の体制づくりも急務になるかと思います。課題の多いスタートとなりますが、会員の皆様方のご協力をお願いいたします。

学会活動