一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

中村研三会長(写真)

2008年1月
日本植物生理学会
会長 中村 研三

 今年から会長の大役をお引き受けすることになり、その責任の大きさにとまどいます。しかし、私自身本学会の中で育てていただいてきたという思いも強く、学会運営に直接に携わっていただく各種委員その他の方々と共に、微力ながら力を尽くしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 日本植物生理学会は1959年の4月に発足し、翌1960年に第1回の年会が開催されて学会誌 Plant and Cell Physiology (PCP) の第1号が発刊されており、2009年には創立50周年の節目を迎えることになります。この間の会員数や年会参加者の増加はめざましく、この3月に札幌で開かれます第49回年会では、ついに一般講演の演題数が1,000の大台に乗りました。PCP誌も国際的に高い評価を受け、年を追ってインパクトファクターも高くなり、外国からの投稿数も非常に多くなっています。こうした現状は、本学会が植物科学領域での活発な情報交換や討論・教育の場として多くの学会員の期待に応える役割を果たしていることの証かと思います。これまでの学会の成長には、分子生物学、モデル植物、ゲノム解読などによる植物科学の飛躍的な進展と拡大、その農学・薬学の広範な分野への波及が背景の一つにありますが、本学会が絶えず新しいことにチャレンジして若さを保ってきたことも大きく貢献していると思います。創立当初より、本学会は学部の枠にとらわれずに若い会員も積極的に参加するアットホームな雰囲気の学会運営のなか、国際的な視野のもとで植物科学の新しい領域を積極的に取り入れてきました。過去、何代かの会長のもとで本学会の方向性が示されています。

 その一つは植物科学の面白さや食糧や環境問題における植物科学の重要性を積極的に社会にアピールしていくことです。2002年には広報幹事と広報委員会を設けて、GMO問題などについての学会から社会への提言、ホームページ 「みんなの広場」 コーナーや市民向け講演会といった活動を行い、昨年には 「植物まるかじり叢書」 シリーズや 「これでナットク!植物の謎」 といった書籍を出版して好評を得ています。今後も、こうした活動を継続的に行っていきたいと思います。もう一つは、国際競争と国際連携のもとでの植物科学の振興に寄与するために、学会活動の更なる国際化を目指すことです。PCP誌をさらに魅力ある国際誌として発展させていくことは勿論ですが、年会運営にも一層の国際化が求められます。これまで行ってきたアメリカ植物科学会と連携した活動に加え、今後は中国、韓国などの関連学会と連携した活動も目指し、そのためにも年会での発表形式の国際化を検討することも必要です。

 こうした発展の一方で、規模が大きくなるが故の学会の組織運営や経理の面での問題も生じており、また年会開催も会場確保や運営が “手作り” だけでは賄えなくなってプロ化を導入する必要にも迫られています。本年度からは、本学会もいよいよ法人化に向けて具体的に取り組むことになります。このためには、種々の会則の変更など、会員の皆様に直接関わりの深い多くの問題を解決していかなくてはなりません。これまで諸先輩方が培ってきた気さくで若々しく、挑戦的な本学会伝統の気風を残しつつ、いかに法人化に代表される学会運営のプロ化を計るかが大きな課題になっています。こうした大切な時期にさしかかった今、会員の植物科学領域の研究教育活動の向上を目指す本学会の一層の発展のために、これまで以上に会員の皆様の積極的なご意見とご協力を切にお願いいたします。

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