篠崎一雄会長(写真)

2010年1月
日本植物生理学会
会長 篠崎一雄

 日本植物生理学会は昨年50周年を迎えました。1959年4月に設立した本学会は、当初から学際的な植物生理学の研究交流を目指したものでした。また、国際植物生理学連合の結成の構想の中で、その一翼を担うために国際的な研究を目指して設立されたものでした。このような伝統は長く引き継がれており、本学会は常に時代の新しい流れを取り入れて発展してきました。また、本学会の主要な目的は、欧文誌のPlant and Cell Physiology (PCP) を発刊し、国際的なジャーナルとして育てることでもありました。シンポジウムの開催を重要視しており、時代の最先端のトピックスを取り上げて学際的な交流を目指して議論を深めてきました。このような伝統が本学会の大きな強みになっています。

 本学会の最近の10年の発展は目覚ましいものがあり、日本の植物科学を牽引する代表的な学会に大きく成長しました。また、学会誌のPCPは日本から出版される学術誌ではトップクラスのインパクトファクターを誇る国際的ジャーナルに発展しました。しかし、本学会は成熟とともに、その成長が止まり始めているようにも見えます。今後の発展を考えた時、学会として新たな挑戦が必要であると感じています。本学会は若手の会員の割合が多く、常に新しい研究分野にチャレンジしています。また、外国人の参加者も増えて、国際化も進みつつあります。新分野に挑戦する若手の新しい感覚を積極的に取り入れて、今後の本学会の新しい方向性を考えて行きたいと思います。2000年からの10年間はシロイヌナズナのゲノム解読に始まり、イネゲノムの解読、さらにゲノム機能学の発展にともない、マイクロアレイや変異体リソースの利用などが研究の推進力となりました。一方、ゲノム解読の技術開発により、他の色々な作物、樹木などが研究の対象として取り上げられるようになってきました。実際に、モデル植物を利用した植物科学から、作物の育種、遺伝学や樹木のバイオテクノロジーへの展開、さらに進化や多様性に関するゲノムレベルでの研究が急速に発展しています。これから発展するこれらの研究分野を意識的に取り上げて行くことが、今後の発展のために重要ではないかと考えています。

 本学会は基礎植物科学分野で国際的レベルでの独創的な研究を推進することが本来の目的です。しかし、基礎的研究の急速な発展とともに、この10年で植物科学の社会との関わりが大きくなりました。特に基礎科学で得られた成果の社会還元が期待されてきています。また、地球規模の温暖化に伴う環境問題、人口増加に伴う食料問題、長寿社会に伴う健康問題など世界共通の課題などの地球規模の問題の解決に植物科学からの貢献が期待されています。このような社会との接点、国際社会との協調など、従来の研究者のセンスではあまり関わりのなかった事柄を正面から考えることが必要になってきています。このような背景を考えると、本学会でも基礎科学から応用研究に活動のウィングを広げる必要性があると思います。

 昨年のアメリカ植物科学会 (ASPB) で、各国の植物関連学会の会長が集まって議論し、国際的な連携での植物科学の推進と地球規模問題の解決への取り組みに関して、国際協調で進めようとの声明が出されました。本学会としても、このような国際連携、国際化対応のための議論を始めたいと考えています。大会の国際化、英語化を進めること、海外の学会との協調を進めること、さらに植物科学からの国際貢献などに関して取り組んで行こうと考えています。

 科学技術創造立国の基本的政策に従い、国として科学技術関係の予算が増加してきました。現在の、日本からの多くの研究成果はこのような予算獲得に支えられているといえます。このように、多くの研究費が投入された結果、研究成果の社会還元や産業応用への貢献が期待されています。最近では、植物科学で得られる研究成果の環境、社会還元や国際貢献を目に見えるようにすることが重要になりました。このような社会貢献への対応と社会への情報発信に関して植物科学の関連学会と連携して検討し直すことが必要になったと考えています。とくに植物関連の学会で協力して、環境、エネルギー、食料問題の解決に貢献できる植物科学をアピールして行くことも重要だと思います。

 また、植物科学の将来を担う大学院生や若手研究者の育成は学会として取り組む重要な課題です。また、若手研究者のキャリアーパスの問題の解決は重要だと思います。このためには植物科学の関連学会との連携を進めて、共通の課題として取り組んで行くことが重要です。

 このように、2010年に始まる次の10年を展望して考えると、日本植物生理学会は、次の時代のための新たな挑戦をしていくことが必要だと感じています。その先頭に立って次の10年の発展に向けて努力して行きたいと思っていますので、学会員の皆様の積極的なご支援をお願いいたします。

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