一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists


 

日本植物生理学会
会長 河内孝之

会長 河内孝之の写真

 2022年3月22日から2年間、前島正義会長のあとを引き継いで一般社団法人日本植物生理学会(以下、植物生理学会)の会長を務めることになりました京都大学生命科学研究科の河内孝之です。海外での博士研究員を終えて日本にポジションを得たときに、ある先生にとても素晴らしい学会があると教えてもらって年会に参加したことをきっかけに植物生理学会に入会しました。それから約30年、年会での発表や議論、PCPへの論文投稿と査読過程など、期待通り研究活動への刺激と経験を蓄積することができました。また、学会運営にも関わる機会もありましたが、高い専門性と研究意欲を備えた研究者が学会の課題にも建設的に取り組む姿を見ることで学んだ経験も貴重なものです。会長という大役には戸惑いますが、育てていただいた植物生理学会に対して微力ながら貢献できるよう、2年間頑張る所存でございます。

 昨年夏に前島前会長から私や常任理事を含む10名の会員に、今後の植物科学の発展、若手・女性研究者の参画と育成等を一層推進するために、学術研究団体である植物生理学会の現状を分析し、採るべき施策を提言としてまとめるように依頼がありました。議論を重ねた結果、これからの学会活動の基本的な考え方を次のようにまとめています。2年間、会長を務めるにあたり、今後の活動に生かす予定です。提言全文は植物生理学会ホームページでも公開されていますので、そちらもご覧ください。
「今後の日本植物生理学会の活動に関する提言(2022年)」

1) 植物生理学会の特長は、分野横断性と国際性である。また、建設的な姿勢で自由に議論する体質と新たな取り組みを推進する機動力を備えることも強みである。植物生理学会は時代の変化に対して活動の適切な見直しと新たな取組の導入を躊躇することなく進める。

2) 植物生理学会の発展には次世代育成とダイバーシティ推進が必須である。大学院生(学生会員)が研究を楽しみ、さまざまな将来像を描くこと、一般会員(特に若手)がワークライフバランスを保ちながら研究を推進し活躍することを植物生理学会として支援する。高校生や大学の学部学生が植物科学に関心をもつための活動を進める。

3) 現代の研究活動は社会と切り離すことはできない。植物科学の研究成果が地球規模の諸課題の解決に貢献することが期待されている。社会との接点の強化や情報発信を重視する。国内外の学術団体・組織との連携を深め、必要な共同提言を積極的に発信することで社会に働きかける。

 植物生理学会は60年を超える歴史をもち、人間でいえば還暦を過ぎた頃ということになります。この年数は自分の年齢ともほぼ重なり、年を重ねることのマイナス要素は他人ごとではありませんが、学会に人の年齢を当てはめるのはナンセンスです。伝統に甘んずることなく、学会に注がれる若い研究者の熱意と諸先輩方を含む会員の経験を合わせた活動ができるはずです。個々の研究者では達成できないことを会員の交流によって達成できればベストです。自分が会員になった頃の学会への期待をいつまでも会員間で共有できるように、幹事長を含む学会理事、運営委員、各種委員会委員とも協力して活動を進めていきたいと思います。会員みなさまの積極的なご意見やご提案は大歓迎です。どうぞ、自由に声を寄せてください。よろしくお願いいたします。

 残念ながら過去2年間は新型コロナウイルスに翻弄されました。植物生理学会も3回連続で年会の対面開催ができていません。コロナ禍がもたらした影響についてはよく分析する必要があります。しかし、前運営委員会のみなさまの努力で、困難の多くを乗り越えてきたようにも思います。オンラインのコミュニケーション方法の急速な浸透は、時間と経費を浪費することなく効率的に活動できることも示してくれました。対面活動への制限によりストレスも相当たまったのではないかと思いますが、ストレスを力に変えて、自由な研究活動を進めたいものです。一日も早くコロナ禍の収束を願いつつ、みなさまにお目にかかることを楽しみにしています。

学会活動