一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists


 

日本植物生理学会
会長 経塚淳子

会長 経塚淳子の写真

 2024年3月16日から2年間、一般社団法人日本植物生理学会の会長を務めることになりました東北大学生命科学研究科の経塚淳子です。私は、修士課程終了後に企業に就職したことなどもあり、植物生理学会の会員歴は同世代の会員の方々より短めですが、1995年に大学での研究を開始してからは植物生理学会を主な所属学会として年会での発表や議論、学会誌Plant & Cell Physiology (PCP)への論文発表などを軸として研究活動を進めてきました。また、委員会委員、運営委員、代議員、理事などの立場での学会運営への参画、PCPの編集実行委員として学会誌の編集に関わる機会もいただきました。2023年の第64回年会(仙台)では年会委員長として年会運営も経験しました。植物生理学会におけるこうしたさまざまな活動を通して多くのことを学ぶことができました。とはいうものの、会長という大役が私に務まるかいささか不安ではありますが、会員の皆様に選ばれたということを心の支えに、2年間の任期中に植物生理学会が引き続き成長し、さらに躍進するための後押しができたらと考えています。

 植物生理学会は歴代会長・関係者のご尽力により、2014年に一般社団法人(非営利型)となり、学会誌PCPは、Oxford University Press社とのプロフィットシェア契約により科研費に頼らず刊行できるようになりました。男女共同参画委員会や国際委員会なども設置され、会員の研究生活を多方面からサポートする体制が整えられてきました。さらに、広報委員会を中心とした「みんなのひろば」の運営や「植物まるかじり叢書」、「植物の謎」の発刊などの活動により、一般の方々に植物科学の面白さを伝え、植物科学のすそ野拡大に貢献してきました。河内前会長は、「今後の日本植物生理学会の活動に関する提言」で日本植物生理学会の今後についての指針を示し、会員のPCP論文掲載料の無料化、植物科学新技術ワーキングループの発足、Taiwan-Japan Plant Biology 2023参加のための若手会員への旅費支援、シニア会員制度の創設などの事業を推進しました。このように、植物生理学会は、発足以来、常に日本の植物科学を先導する集団として順調に活動してきました。

 その一方で、2019年末から3年近くに渡り世界中の人々の活動を制限したコロナ禍により、私たちの研究活動も著しく妨げられました。2020年3月に予定されていた第61回大阪年会は要旨のみの発表となり、第62回松江年会と第63回つくば年会がオンライン開催となったことは周知の通りです。コロナ禍はだれにとっても不幸な時間でしたが、特に、大学生、大学院生、若手研究者にとっては、研究者としてのキャリアの初期に研究者ネットワーク構築の機会が奪われたという点で大きな損失だったと思います。人との関わりは研究に欠かせません。国際レベルの研究を展開するためには国際的なネットワークを構築し、研究仲間をもつことが重要です。2022年半ばには活動の制約が徐々に緩和され、2023年仙台年会、2024年神戸年会が対面で開催されるなど、研究交流が再開されました。ところが、今度は、諸外国の物価上昇や円安などの問題により、日本からの国際学会参加や海外の研究室訪問が難しくなっています。また、近年のわが国の研究力低下やそれにともなう国際的な存在感の低下という問題は、植物科学分野も例外ではありません。人口減少・経済停滞という問題を抱えた縮小社会において、若手の登用も含めたダイバーシティの推進は必須のアジェンダです。

 このような時代・社会において植物生理学会をより活性化するためには、さまざまな観点から総合的な国際化を推進することが必要であると考えています。そのために、これまでの取り組みに加え、「JSPP MIRAI 2030」プロジェクトにおいて会員の皆様の国際研究活動への支援を強化します。幸い、歴代の会長・関係者の皆様が構築したPCP刊行システムのお陰で、日本植物生理学会の財政基盤は良好です。これを有効に使い、だれ一人をも取り残すことなく会員の皆様の研究活動を支えるとともに、未来を担う若手研究者を支援する所存です。

 最後に、日本植物生理学会の活動を支える私たちの学会誌PCPへのさらなるサポート(論文投稿、論文引用、論文の査読)をよろしくお願いいたします。

学会活動