植物 (A) が光と水と無機塩類と空気だけで、自らの身体を作り上げ、成長・増殖していく能力 (光合成能、光独立栄養性) はよく知られています。一方、個体から切り出された細胞 (B) は培地の中に成長の養分となる糖分や成長を促進する植物ホルモン (オーキシンやサイトカイニン) の添加を必要とします。しかし、細胞を選抜することにより (C)、糖の添加を必要とせずに、成長できるような細胞 (D) が得られてきます。このような細胞は葉緑体の複製・分化のモデルとして、また、葉緑体機能変異株の単離や生理活性物質のスクリーニングと評価、ストレス耐性の解析と応用などに利用されています。
細胞培養と光合成 Q&A
Q: 細胞培養するとなぜ光合成しなくなるのでしょうか?
A: 理由はよくわかっていませんが、培地に栄養となる糖があるために光合成に関連する遺伝子が作られなくなることがひとつにはあげられます。また、写真からわかりますように、一つの細胞には発達した葉緑体 (クロロフィルの蛍光で赤く見える) 以外に発達していない葉緑体も見えます。このように培養細胞では細胞の分化がうまく制御されていない可能性があります。
Q: 光合成の見せ生育させるためには変な形の容器が使われていますが、あれは何のためですか?
A: 二段重ねのフラスコの容器には炭酸緩衝液といって空気中の炭酸ガス濃度を1%程度に高める溶液が入っています。培養細胞では、光合成をする葉緑体の発達が悪いことと、その部分が細胞膜から離れて存在しているために炭酸ガスの葉緑体への拡散が悪く、より高濃度の炭酸ガスが生育に必要になっています。