一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ブラシノライドの農業への利用について

質問者:   大学生   角本邦子
登録番号0254   登録日:2005-05-22
ブラシノライドについて。また、ブラシノライドの農業への利用について教えて下さい。
角本邦子さん

お待たせしました。
ブラシノライド関連物質の化学、生理的作用を広く研究されている、帝京大学バイオサイエンス学部の横田孝雄先生に解説を頂きました。

ブラシノライド(BL)はその発見の直後から「6番目の植物ホルモン」として注目を浴びてきました。特に日本の研究者によって類似の生理活性を示すホモBLが化学合成されて生理学実験に利用できるようになったこと、植物に広くBL関連物質が存在することなどが明らかになって植物の生育に大きな影響をもたらすことがはっきりしてきました。当然、農業への利用を目的とした試験研究も盛んに行われるようになりたくさんの断片的成果が報告されてきましたが、現段階で実際の農業への利用という段階には至っていないようです。
BLははじめて発見されたステロイド系生理活性物質の固有名詞ですが、その後同じような生理活性をもつ関連物質が多数合成され、また天然物質としても少しずつ化学構造の違う一連の化合物が発見されていますので、それらをブラシノステロイド(BR)と総称しています。
 いろいろな作物に対する試験的研究で、種子発芽の促進、栄養成長の促進(葉数、穂数、花数などの増加を含み)、不定根発生の促進、ダイコンなど長日作物の開花促進、着花、着果などの促進、不利な環境条件に対する耐性の増加などが報告されています。しかし、これらの研究は、沢山の研究者が違った作物材料を使って、違った環境の下で行ったもので「BRの効果を総合化」することは困難です。しかし、ここ数年の研究では「収量の増加」がたくさんの作物で認められているようです。ベラルーシ、ロシア、中国、キューバ、インド などの研究者が良好な成績を紹介しています。その作用の理由の1つとして、 とくに、耐病性とか耐冷性などの抗ストレス作用があげられているようです。 しかし、農業に本格的に大規模に使われている段階ではないようです(大規模実験は中国で行われている模様ですが)。どうも合成ブラシノステロイドの製造コストが高く投資と収益のバランスが取れないようです。しかし総じて、この問題は合成技術や調剤技術の進歩によって近い将来解決されるであろうと楽観的な予測がされています。しかし、日本では全く熱が冷めてしまっているように思われます。日本のように農作物に対するストレスが少ない場所ではあまり顕著な効果が出ないためもあります。

 横田 孝雄(帝京大学バイオサイエンス学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
 今関 英雅
回答日:2009-07-03
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