一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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塩分

質問者:   中学生   理科大好き!!
登録番号0365   登録日:2005-08-29
今自由研究でカイワレ大根を育てているのですが、水に調味料をいろいろ混ぜて育てています。
すると塩を混ぜてあげたカイワレがどんどんかれていきました。
何故なんでしょうか?

同じようにお酢でも育てているのですが、お酢も4日目ぐらいからかれてしまいました。
これも理由をお願いします。
理科大好き!! さん:

質問コーナーへの利用を有り難うございます。夏休みの自由研究ですか。
登録番号0365として、以下に回答いたします。


 身近なものを使っていろいろなことを試してみることはとても有益なことです。カイワレ大根をいろいろな条件で育て、育ち方を観察するのも楽しいことですが、どうも今回はうまく行かなかったようですね。もう少し実験の仕方を詳しくお聞きしたいのですが、「枯れてしまった」結果からだいたいの様子が分かりますので、それにしたがってお答えします。
 まず、塩の影響については、同じような質問が質問コーナーの登録番号0327にありますのでその回答をご覧下さい。簡単に繰り返します。外から塩水を与えると根の細胞の中にある水溶液(細胞の中身全体の液)の濃度よりも、根の外側の塩水溶液の濃度が高くなるので根の細胞から水が外に出されて「脱水状態」になるためと、それほど濃くない塩水でもナトリウムイオンの毒性のために枯れてしまいます。ですから、問題は使った塩水の濃度がどの位か、によって生育が遅くなったり、枯れたりします。
 次にお酢の場合も4日くらいで枯れてしまった、とのことですが、これもお酢をどの位薄めたかが問題です。お酢にはいろいろな種類がありますが、おそらく料理に使う米酢、穀物酢あるいは合成酢のどれかを使われたものと思います。お酢は穀物のデンプンをアルコール発酵させてアルコールを作り(つまりお酒)、それに酢酸菌を加えてアルコールを酢酸に変化させて作ります。ですから「酸っぱさ」の原因は酢酸で、ふつう4〜7%が含まれます。この他にアルコール発酵の段階で出来た乳酸、コハク酸、リンゴ酸、などが含まれ「酸っぱさ」よりも「美味しさ」「旨み」の原因となっています。酢酸6%溶液は約1モルという濃度になりpH 2.4、10倍に薄めてもpHは2.9ほどになります。ですから、仮に10倍希釈のお酢を使ったとしてもpHは3に保たれます。その上、お酢自体はいろいろな物質が含まれていますのでpHが変化しにくい状態になっています。10倍希釈液でも酢酸の濃度は0.1モルでpHは簡単に変わりません。このような状態で酢酸はイオンとしてでなく分子としても吸収されますので細胞は細胞内のpHを正常(pH7〜7.5)に保つことが出来なくなり枯れてしまったと考えられます。
 この次に実験するときには、食塩にしろ、お酢にしろ濃度をいろいろに変えてカイワレダイコンがどのような生育をするか観察して見ませんか。よく使う方法は、お酢をまず半分に水で薄めます。その半量を次にさらに半分に薄める事を繰り返すと、お酢の濃度は1、1/2、1/4,1/8、1/16….と倍倍希釈液を作ることが出来ます。食塩なら海水と同じ3.5%水溶液をまず作り、その倍倍希釈液をつくって使用します。
JSPPサイエンスアドバイザー
 今関 英雅
回答日:2009-07-03
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