一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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植物にとって紫外線はいいこともあるのですね

質問者:   中学生   岸逸郎
登録番号0403   登録日:2005-10-21
質問に答えてもらってありがとうございました。
答えの中に紫外線は植物のためにいいこともあるとありました。
アントシアニンの合成や光屈性のことです。
アントシアニンや光屈性のことがもっとくわしく知りたいと思います。

それからフラボノイドという色素のことも教えてください。
よろしくお願いします。
岸 逸郎君
紫外線のことについての追加質問にお答えします。

 この前にも書いたように、植物にとって紫外線はほとんどの場合有害ですが、青の波長域に近いUVAは利用される場合もあります。花の色などに含まれるアントシアニン色素(赤〜青、紫)の合成もそのひとつです。高山では花の青色が濃いのは、紫外線の量が多いからだとされています。また、葉緑体に存在するある遺伝子の発現がUVAで促進されることも報告されています。
 植物が光を利用する場合は光を受容する受容体というものを通して行います。植物では赤-遠赤色光を受容体であるフィトクロムと青ーUVAの光の受容体であるクリプトクム及びフォトトロピンが知られています。これらのことについてはみんなの広場の本年度の質問(登録番号0203:赤い光と青い光)および植物科学トピックスのページにある和田正三先生の講演記録を参照して下さい。

 光屈性は植物がより明るい方向へ屈曲して成長する現象をいいます。実験的には暗黒で育てたモヤシ(真っすぐ伸びている)に一方向からだけ光を当てると、植物は光の方向へ屈曲して伸びて行くのが観察されます。この時の有効な光は青ーUVAなのです。ちなみに、光屈性の現象は進化論で有名なダーウインがはじめに詳しく研究して、それが端緒となって植物ホルモンの一つであるオーキシンが発見されました。高校の生物の教科書には必ず書いてありますので、見てください。

アントシアニンはフラボノイドと呼ばれる一群の化合物に属しています。フラボノイドに属する化合物はフラボン(2ーフェニルクロモン)という特定の化学構造を含んでいます。花の色を成す色素の大部分はフラボノイドかニンジンにふくまれるカロテノイドにぞくします。

ところで、人が見る花の色やそのパターンは可視光線の元でのものです。しかし、紫外線のもとでみると全く違ったパターンが観察されます。昆虫はUVA領域の紫外線を感知することができますから、人がみている花色のパターンと昆虫がみているパターンとは異なることになります。昆虫はこの人には見えないパターンに誘われて花を訪れるようです。昆虫が花を訪れることは植物の受粉にとって大切なことです。そう考えると、紫外線は植物の繁殖にとってきわめて重要な役割をになっていることにもなりますね。
JSPPサイエンスアドバイザー
 勝見 允行
回答日:2009-07-03