一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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質問者:   その他   井田 勇
登録番号0412   登録日:2005-11-02
樹木はなぜ塩分に弱いのか
根拠を知りたい
井田 勇 さん:

同じ質問が質問コーナーの登録番号0327にありますのでご参考にして下さい。その回答と同じ内容になりますが、簡単に主要な点を繰り返します。

樹木に限らず植物は一般に、ある濃度以上の塩分に弱い性質をもっています。
植物は根から水と一緒に各種の栄養素(ミネラル)を吸収しますが、吸収される水分量はかなりの大量です。土壌中の水が根の細胞内に水が移動(吸収)する仕組みと塩分濃度とが密接に関連しています。根の細胞の中に含まれる水にはいろいろな成分が溶けています。一方土壌中の水にもいろいろな物質が溶けています。ですから、細胞内の水溶液と土壌中の水溶液という二つの水溶液が細胞の境である細胞膜を介して接しています。濃度の違う二つの水溶液が接しているとき「水の分子は濃度の低い水溶液から濃度の高い水溶液の方へ移動する性質」をもっています。根と土壌との場合、通常は土壌中水溶液の濃度は細胞内水溶液の濃度よりもはるかに低いため、水分子は常に土壌側から細胞側へ移動しています。細胞膜という膜が二つの水溶液の間にありますが、細胞膜には水を自由に通す性質がありますので水の吸収は濃度差だけでおきています。このとき、どんな物質が溶けているかはまったく問題になりません。
さて、「塩分に弱い」ということは、濃度の高い塩溶液を与えるとか、海水に浸かるなど何らかの原因で土壌中の塩濃度が高くなったときに成長が止まるか枯死することで、このような状態では土壌中の塩濃度は細胞中の水溶液濃度よりも高くなるため、根細胞から土壌側へ水が移動して植物は脱水状態になってしまい、その程度によって成長が止まったり、枯死したりします。塩の種類は関係ありませんが、塩化ナトリウム(食塩)の場合、ナトリウムイオンには毒性がありますので、脱水がおきない程度の濃度でも食塩水は塩害の原因となります。
JSPPサイエンスアドバイザー
 今関 英雅
回答日:2009-07-03
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