一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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師管について

質問者:   高校生   さいこ
登録番号0466   登録日:2006-01-13
高校では師管は生細胞で、原形質が残っていると教わりました。
では、師管の中を養分が通る時、原形質は何処にあるのでしょうか。

また、被子植物には伴細胞がありますが、裸子植物には伴細胞がありませんよね。
伴細胞の働きはいったいなんですか?
是非教えて下さい。
さいこ様
 みんなの広場へのご質問ありがとうございました。質問は短いのですが、沢山お答えしなければならないように思います。高校で習われたようなので、繰り返しになりますが、まず篩管のことについて、簡単に触れます。篩管は細長い細胞(篩管細胞)が縦方向につながり、つながった二つの篩管細胞の仕切りの細胞壁に30個くらいの孔が開き、細胞の中身がつながった形をしています。孔の開いた仕切りの細胞壁は篩(ふるい)のようですので、この細胞壁を篩板とよび、管を篩管と呼ぶのです。高校で使用している言葉の師管の師(=先生)とこの管にはなんの関係もないので、師管という言葉は好きでありません。ということで、ここでは篩管という言葉を使わせて頂きます。これも高校で習ったと思いますが、篩管の中を同化産物などが流れているのですが、これはプラスの圧によって送られています。
 さて、質問の答えに入ります。篩管細胞の中の原形質がどこにあるのかが第1の質問でした。前置きであげた篩管の構造とその中に圧がかかっていることから、篩管細胞の構造を調べるのはとても難しいのです。篩管細胞の構造を調べようとして、茎を切ると、篩管は一つながりなので、切った影響が、管中に現れ、生きていた時とは違った構造になってしまいます。もう一つ切ると、篩管の中の圧が消えてしまいますので、これも構造を壊すもとになります。切ったあと、1000分の1秒くらいの単位で、構造が壊れると言われています。そこでどうするのかというと、一つは、小さな芽生えを使って、芽生えごと固定(教科書の繪では細胞の中身はじっと動かないように見えますが、実は活発に動いていますので、この動きを止めないと詳しく構造を調べることができません。なるべく生きている時と同じ状態で動きをとめる必要があります。この止めるための処理を固定といいます)して調べる方法で、もう一つは切るまえに迅速に凍らせて、そのあとで切り出し、固定する方法です。そのような方法で調べられていますが、未だにこれで良いという結果はでていません。今までの所では、先ず凍らせる方法が良いと思うので、その方法で調べた結果をご紹介しますと、篩管細胞の中の原形質は細胞の側面に沿って存在し、物の輸送の邪魔になっていないと言うことですが、もっと優れた方法が開発されると違う結果になるかも知れません。
 第2の質問は伴細胞についての質問でした。裸子植物に伴細胞がないことを高校で習ったのですか、すごいですね。裸子植物には伴細胞の代わりにタンパク細胞 (albuminous cell)というものがあって伴細胞に似た働をしていると考えられていますが、詳しくは調べられていないと思います。伴細胞の働ですが、まず第1に篩管細胞を助けているということがあります。篩管細胞には原形質がありますが、核はありません。それでも10年、100年と生きると言われています。細胞が生きて行くのには核の遺伝子の遺伝情報を用いて作られたタンパク質が必要ですが、核のない篩管細胞ではこのタンパク質を作ることが出来ません。タンパク質は伴細胞で作られて、篩管細胞に送られていると考えられています。篩管細胞と伴細胞は沢山の小さな孔(原形質連絡と呼ばれています)でつながっており。伴細胞で作られたタンパク質はこの原形質連絡を通って篩管細胞に運ばれます。次に同化産物を篩管の中に入れるのにも働いています。葉の葉肉細胞で合成された同化産物は直接篩管の中には入れなく、先ず伴細胞に入り、そこからこれも原形質連絡を通って篩管の中に送り込まれます。
JSPPサイエンスアドバイザー
 柴岡 弘郎
回答日:2006-01-23
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