質問者:
会社員
あゆみ
登録番号0740
登録日:2006-06-05
植物をドライフラワーにすると、変色したり色あせたりしますが、その原因として紫外線や水分が考えられます。ドライフラワー
植物に対してどのような影響が与えられてどのような変化が起こっているのか詳しく教えてください。
あゆみ 様
植物を乾燥する多くの方法がありますが、その方法によって乾燥した植物の組織の色は元の生きた植物の色とは大きく違ってきます。身近な緑茶と紅茶を例にして考えてみましょう。緑茶と紅茶は(それぞれに適した栽培種を用いますが基本的には)同じチャの木の葉を乾燥したものです。紅茶は収穫したチャの葉をそのまま自然乾燥させてつくります。これは緑の葉を切り取って放置しておくとよく経験する様に、チャの葉も褐色に変化します。葉の細胞中には葉緑体、ミトコンドリア、液胞など(細胞小器官)がそれぞれ活動できるよう配置(組織化)されていますが、乾燥によって徐々に水が失われていくにつれてこれらの細胞組織が壊れ、特に液胞の酵素によって細胞内の色素やその他の多く成分が分解し、葉緑体のクロロフィール(葉緑素)も分解され緑色が消失します。同時に液胞の酵素(オキシダーゼ)によってポリフェノールが酸化され、重合します。その結果(リンゴを切った面が褐色になる様に)ポリフェノールが酸化され、紅茶の美しい色となります。一方、緑茶の場合は、収穫したチャの葉を直ちに、短時間(数分)蒸してから速やかに乾燥します。葉を短時間加熱することによって細胞の酵素が活性を失うため、葉緑体のクロロフィールを初め細胞成分はほとんど分解されず、また、ポリフェノールを酸化する酵素も働くことができず紅茶の様に褐色にはなりません。
ドライフラワーにする場合、植物を緑茶方式で乾燥すれば、自然に放置して乾燥する紅茶方式に比べ、植物の元の成分が変化しない状態でつくることができるでしょう。また緑茶のように加熱しなくとも、乾燥時間(細胞の水分を減らすための時間)を短くすれば、酵素が植物の細胞成分を分解する時間が短くなるため、植物の色素を含め元の成分のままでドライフラワーにすることができると思われます。これは、細胞水分が少なくなれば細胞の構造は壊れますが、酵素も水分がなければ作用できないためです。
こうして作ったドライフラワーを長持ちさせるにはどうすればよいか?
ご質問にあります水分は残っている酵素が作用する機会を与えることになり、酵素による褐変化が進行しやすくなります。また、微生物が付着、繁殖する場を提供することになるため、退色、色の変化を抑えるため、できるだけ乾燥状態を保つことが必要です。一方、ドライフラワーに含まれている植物色素はその色素が吸収する可視光によって、自己光増感酸化反応{色素が光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを酸素分子に渡して活性酸素(この場合、反応性の高い一重項酸素分子)とし、この活性酸素が色素分子を酸化分解する反応}が生じやすいため、ドライフラワーの色があせることになります。紫外線もこの作用がありますが、太陽光は大部分が可視光であり、室内で紫外線は無視できるので、実際上は可視光のみを考えればよいでしょう。この可視光による退色は水分がなくても進行し、従って、ドライフラワーの退色、変色を防ぐにはできるだけ光に当てないようにすることが必要です。酸素をなくすれば上の反応で活性酸素が生じないためドライフラワーの色あせを抑えることはできますが、実際上この方法を用いるのは困難でしょう。町に張られたポスタ-や表示が少しずつ色あせてくるのも、自己光増感酸化反応による光退色です。では、ドライフラワーではなく、生きている植物は室内よりずっと強い太陽光に毎日さらされているのに、なぜ色あせをしないのでしょうか?なぜヒトのように日焼けを受けないのでしょうか?これは生きている植物の大きな謎ですが、その謎は少しずつ解明されています。
植物を乾燥する多くの方法がありますが、その方法によって乾燥した植物の組織の色は元の生きた植物の色とは大きく違ってきます。身近な緑茶と紅茶を例にして考えてみましょう。緑茶と紅茶は(それぞれに適した栽培種を用いますが基本的には)同じチャの木の葉を乾燥したものです。紅茶は収穫したチャの葉をそのまま自然乾燥させてつくります。これは緑の葉を切り取って放置しておくとよく経験する様に、チャの葉も褐色に変化します。葉の細胞中には葉緑体、ミトコンドリア、液胞など(細胞小器官)がそれぞれ活動できるよう配置(組織化)されていますが、乾燥によって徐々に水が失われていくにつれてこれらの細胞組織が壊れ、特に液胞の酵素によって細胞内の色素やその他の多く成分が分解し、葉緑体のクロロフィール(葉緑素)も分解され緑色が消失します。同時に液胞の酵素(オキシダーゼ)によってポリフェノールが酸化され、重合します。その結果(リンゴを切った面が褐色になる様に)ポリフェノールが酸化され、紅茶の美しい色となります。一方、緑茶の場合は、収穫したチャの葉を直ちに、短時間(数分)蒸してから速やかに乾燥します。葉を短時間加熱することによって細胞の酵素が活性を失うため、葉緑体のクロロフィールを初め細胞成分はほとんど分解されず、また、ポリフェノールを酸化する酵素も働くことができず紅茶の様に褐色にはなりません。
ドライフラワーにする場合、植物を緑茶方式で乾燥すれば、自然に放置して乾燥する紅茶方式に比べ、植物の元の成分が変化しない状態でつくることができるでしょう。また緑茶のように加熱しなくとも、乾燥時間(細胞の水分を減らすための時間)を短くすれば、酵素が植物の細胞成分を分解する時間が短くなるため、植物の色素を含め元の成分のままでドライフラワーにすることができると思われます。これは、細胞水分が少なくなれば細胞の構造は壊れますが、酵素も水分がなければ作用できないためです。
こうして作ったドライフラワーを長持ちさせるにはどうすればよいか?
ご質問にあります水分は残っている酵素が作用する機会を与えることになり、酵素による褐変化が進行しやすくなります。また、微生物が付着、繁殖する場を提供することになるため、退色、色の変化を抑えるため、できるだけ乾燥状態を保つことが必要です。一方、ドライフラワーに含まれている植物色素はその色素が吸収する可視光によって、自己光増感酸化反応{色素が光エネルギーを吸収し、そのエネルギーを酸素分子に渡して活性酸素(この場合、反応性の高い一重項酸素分子)とし、この活性酸素が色素分子を酸化分解する反応}が生じやすいため、ドライフラワーの色があせることになります。紫外線もこの作用がありますが、太陽光は大部分が可視光であり、室内で紫外線は無視できるので、実際上は可視光のみを考えればよいでしょう。この可視光による退色は水分がなくても進行し、従って、ドライフラワーの退色、変色を防ぐにはできるだけ光に当てないようにすることが必要です。酸素をなくすれば上の反応で活性酸素が生じないためドライフラワーの色あせを抑えることはできますが、実際上この方法を用いるのは困難でしょう。町に張られたポスタ-や表示が少しずつ色あせてくるのも、自己光増感酸化反応による光退色です。では、ドライフラワーではなく、生きている植物は室内よりずっと強い太陽光に毎日さらされているのに、なぜ色あせをしないのでしょうか?なぜヒトのように日焼けを受けないのでしょうか?これは生きている植物の大きな謎ですが、その謎は少しずつ解明されています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-06-06
浅田 浩二
回答日:2006-06-06