質問者:
教員
石丸
登録番号0918
登録日:2006-07-22
いろいろな花の色水の実験をしていたときに、赤いベゴニアの花をミキサ-にかけて色水をつくると色がなくなって透明な水溶液になりました。みんなのひろば
ベゴニアの花の漂白作用
そこで、白いベゴニアの花の色水をペチュニア(紫)などの色水(酸を加えているので自然に退色することはない)に加えるとやはり無色になってしまいました。
これは、ベゴニアの花の液胞中などに漂白作用のある物質が含まれているのでしょうか。
もし、含まれているとすればそれはどのような物質なのでしょうか。
また、それは酸化剤または還元剤のいずれかなのでしょうか。
石丸 さん:
登録番号0918は花色の化学的研究を専門にしておられる名古屋大学大学院の吉田久美先生から以下のような詳しい回答を頂きました。細胞を潰しただけでもいろいろな化学変化がおきるものですね。
ご質問いただき、ありがとうございます。
ベゴニアの花の色素は、すこし調べましたところ、シアニジンを発色団として、モノアシル化アントシアニンが主成分です。したがって、あまり安定な色素ではありません。アントシアニン色素の退色は、漂白剤などによる作用とは異なり、発色団に水分子が付加することによります。この水和反応は、強酸性ではほとんど起こりませんが、弱酸性からアルカリ性までのpH、即ち、pH3以上では容易に起こります。しかも、濃度が希薄な場合、より促進されます。花弁の細胞内では非常に濃い状態で液胞に溶解しておりますことと、会合安定化作用のある助色素類が共存するために発色が安定です。ところが、これをミキサーにかけますと、色素を高濃度に含んでいた表層細 胞の液胞が破壊され、無色の内側の細胞液とも混合されてしましますのでアントシアニンの濃度が薄くなります。通常の細胞および液胞のpHはそれぞれ、pH7.5付近とpH4-6ですので、ミキサーにかけた花弁の液は、退色したものと判断できます。ベゴニアの白色花弁の液をペチュニアに加えた場合も、ペチュニアの花弁色素がもともと安定で無い上に薄まりますから、退色したものと考えられます。あるいは、液性がより中性に近い場合に、退色が速やかですから、その効果もあるかもしれません。いずれにせよ、ベゴニア花弁に特別な分子が存在するのではなく、希釈とpH変化による効果が主だと思います。
吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科)
登録番号0918は花色の化学的研究を専門にしておられる名古屋大学大学院の吉田久美先生から以下のような詳しい回答を頂きました。細胞を潰しただけでもいろいろな化学変化がおきるものですね。
ご質問いただき、ありがとうございます。
ベゴニアの花の色素は、すこし調べましたところ、シアニジンを発色団として、モノアシル化アントシアニンが主成分です。したがって、あまり安定な色素ではありません。アントシアニン色素の退色は、漂白剤などによる作用とは異なり、発色団に水分子が付加することによります。この水和反応は、強酸性ではほとんど起こりませんが、弱酸性からアルカリ性までのpH、即ち、pH3以上では容易に起こります。しかも、濃度が希薄な場合、より促進されます。花弁の細胞内では非常に濃い状態で液胞に溶解しておりますことと、会合安定化作用のある助色素類が共存するために発色が安定です。ところが、これをミキサーにかけますと、色素を高濃度に含んでいた表層細 胞の液胞が破壊され、無色の内側の細胞液とも混合されてしましますのでアントシアニンの濃度が薄くなります。通常の細胞および液胞のpHはそれぞれ、pH7.5付近とpH4-6ですので、ミキサーにかけた花弁の液は、退色したものと判断できます。ベゴニアの白色花弁の液をペチュニアに加えた場合も、ペチュニアの花弁色素がもともと安定で無い上に薄まりますから、退色したものと考えられます。あるいは、液性がより中性に近い場合に、退色が速やかですから、その効果もあるかもしれません。いずれにせよ、ベゴニア花弁に特別な分子が存在するのではなく、希釈とpH変化による効果が主だと思います。
吉田 久美(名古屋大学大学院情報科学研究科)
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-07-31
今関 英雅
回答日:2006-07-31