質問者:
高校生
たか
登録番号0947
登録日:2006-08-06
夏休みのレポートでおじぎ草の運動について調べています。おじぎ草の刺激伝達について。葉枕までどうやって刺激が伝わるか
膨圧の変化によるということは調べたのですが、何かが触った、という刺激がどのようにしてつぎつぎと葉に伝わり葉枕までいくのですか?
過去の質問コーナーで活動電位と液性因子、とありましたが細胞膜上で行われるのですか?
刺激→ナトリウムポンプ→アクチン細胞骨格といった感じですか?
伝わり方を教えてください。
わからなくて、困っています。よろしくお願いします。
たか さま
みんなの広場へのご質問有難うございました。担当の柴岡(回答の中に出て来る柴岡孝雄先生とは別人です)です。頂いたご質問の回答を、神戸大学の三村徹郎先生にお願いしておりましたが、お忙しい中、早速に回答をお寄せ下さいました。以下に、三村先生の回答の全文を載せますので、参考にして下さい。
たか さん
オジギソウの刺激伝達機構は、植物の研究者だけでなく、誰にとっても本当に不思議に見えます。でも、それは私達が一般の植物を動物とは違うものとして扱うからで、私達と植物は、たとえ何億年前であろうと、元はもちろん同じ祖先から出発しているわけですし、地球上で生きていくための戦略が少し違うだけです。だから、植物は無理して移動しないということと、時間の流れる速さが、動物よりは少し遅いかもしれないという程度の差だと思っています。そんな観点からオジギソウの運動を眺めて見て下さい。
オジギソウについて判っていることは、登録番号0821で上智大学の神澤先生が、一部お答えになられていますが、特に刺激伝達や電気的現象については、柴岡孝雄著「動く植物」東京大学出版会 という素晴らしい本を読まれるのが一番です。現在も、この本にまとめられていること以上のことはほとんど判っていません。ただ、この本はすでに絶版になっていますので、もし勉強をされるということでしたら図書館などで参照して下さい。
簡単にまとめると、
1.植物に触った時に活動電位(神経と同様の)が出る。この活動電位は、塩素イオンが運ぶ電流によって作り出される。恐らくは、細胞膜上の機械感受性イオンチャンネルが接触という刺激を受け取っていると思われますが、このイオンチャンネルの実体は不明です。
2.活動電位は、維管束周囲の細胞を伝わって伝達されていくとされています。恐らく、細胞間の電気的つながりを利用していると思われますが、その詳細は判っていません。
3.また、道管の中の蒸散流によって運ばれる化学物質も刺激を伝えることが想定されています。どんな物質がこの刺激を伝えるのに働いているかは、多くの研究がされてきました。候補はいくつもあげられていますが、まだ本当のところは判っていません。
4.電気刺激が伝わったあと、運動細胞が膨圧を失う過程についても、詳細は不明です。ナトリウムポンプというものは高等植物には存在しません。細胞骨格の関与は、まだ明らかにしなければならないことがたくさんありすぎるという状況ではないでしょうか。
教科書に載せられるような確定した事実はほとんどなく、判らないことだらけなので、これから研究をしていくことが楽しい実験材料だと理解していただくのが一番と思います。レポートを書くとしたら、こんな説がある。別の説もあるという書き方になってしまうと思います。
三村 徹郎(神戸大学)
みんなの広場へのご質問有難うございました。担当の柴岡(回答の中に出て来る柴岡孝雄先生とは別人です)です。頂いたご質問の回答を、神戸大学の三村徹郎先生にお願いしておりましたが、お忙しい中、早速に回答をお寄せ下さいました。以下に、三村先生の回答の全文を載せますので、参考にして下さい。
たか さん
オジギソウの刺激伝達機構は、植物の研究者だけでなく、誰にとっても本当に不思議に見えます。でも、それは私達が一般の植物を動物とは違うものとして扱うからで、私達と植物は、たとえ何億年前であろうと、元はもちろん同じ祖先から出発しているわけですし、地球上で生きていくための戦略が少し違うだけです。だから、植物は無理して移動しないということと、時間の流れる速さが、動物よりは少し遅いかもしれないという程度の差だと思っています。そんな観点からオジギソウの運動を眺めて見て下さい。
オジギソウについて判っていることは、登録番号0821で上智大学の神澤先生が、一部お答えになられていますが、特に刺激伝達や電気的現象については、柴岡孝雄著「動く植物」東京大学出版会 という素晴らしい本を読まれるのが一番です。現在も、この本にまとめられていること以上のことはほとんど判っていません。ただ、この本はすでに絶版になっていますので、もし勉強をされるということでしたら図書館などで参照して下さい。
簡単にまとめると、
1.植物に触った時に活動電位(神経と同様の)が出る。この活動電位は、塩素イオンが運ぶ電流によって作り出される。恐らくは、細胞膜上の機械感受性イオンチャンネルが接触という刺激を受け取っていると思われますが、このイオンチャンネルの実体は不明です。
2.活動電位は、維管束周囲の細胞を伝わって伝達されていくとされています。恐らく、細胞間の電気的つながりを利用していると思われますが、その詳細は判っていません。
3.また、道管の中の蒸散流によって運ばれる化学物質も刺激を伝えることが想定されています。どんな物質がこの刺激を伝えるのに働いているかは、多くの研究がされてきました。候補はいくつもあげられていますが、まだ本当のところは判っていません。
4.電気刺激が伝わったあと、運動細胞が膨圧を失う過程についても、詳細は不明です。ナトリウムポンプというものは高等植物には存在しません。細胞骨格の関与は、まだ明らかにしなければならないことがたくさんありすぎるという状況ではないでしょうか。
教科書に載せられるような確定した事実はほとんどなく、判らないことだらけなので、これから研究をしていくことが楽しい実験材料だと理解していただくのが一番と思います。レポートを書くとしたら、こんな説がある。別の説もあるという書き方になってしまうと思います。
三村 徹郎(神戸大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2012-08-25
柴岡 弘郎
回答日:2012-08-25