質問者:
教員
SATA_YUKI
登録番号1025
登録日:2006-09-01
桜の木を見ると1つの茎の中でも腋芽が伸長して枝になっているものと枝にならないで芽のままのものが見られるのですが、どのような仕組みで1つ1つの腋芽を調節しているのか疑問に思うのです。みんなのひろば
腋芽が伸長して枝になるものとならないもの
質問コーナーの登録番号0700には『腋芽は必ず伸長して枝になるわけではありません。一般には、主茎の茎頂は下部にある腋芽の伸長を抑制しています(頂芽優勢)が、植物種によってその抑制の度合いが強いもの(真っ直ぐな茎に葉だけが付いている)や弱いもの(腋芽が枝となるので叢状になる(スプレータイプのキクなど)までいろいろあります。』とありますが、1つ1つの腋芽を調節するという観点からは十分理解できませんでした。
もし宜しければ、1つ1つの腋芽を調節する機序について教えていただければと思います。
SATA_YUKI様
腋芽の成長に関する質問にお答えします。
腋芽又は側芽の成長調節のメカニズムはかなり複雑で、環境条件や栄養条件などにも影響を受けます。腋芽の成長というとき、腋芽が形成されるのと、それが伸長するのとは別の過程です。形成はふつう茎頂(主軸でも枝でも)の分裂組織の側面で、軸(茎)と葉の上部が角度を成す部分(葉腋という)に起きます。しかし、多くの植物で、成長しきった茎の下の方でも作られることがあります。その場合、休止した状態で取り残されていた分裂組織からできるのだろうといわれています。形成された腋芽はそれぞれに茎頂をもち、主軸の茎頂と同じように葉原基を分化します。腋芽が成長する時は、頂芽の場合と同じです。この場合は枝を形成することになります。伸びた枝は分家した主軸と考えればよく、そこにはまた腋芽ができます。
さて、問題は、成長を始める腋芽とそうでない腋芽はなにがそのようにコントロールしているのかということです。腋芽が成長しないのは成長が抑えられて,停止しているのであり、成長を始めるのはその抑制から解除されたのだと言うことができます。このことは、質問にもありますように、「頂芽優勢」ということと関係があります。一般に、主軸にしろ、副軸(枝)にしろ、頂芽に近い腋芽は成長(伸長)しません。このように、茎の先端の部分が腋芽の成長を抑制することを「頂芽優勢」と呼んでいます。その証拠に頂芽を切除してやれば、腋芽は成長を開始します。庭師が庭の灌木を剪定して、こんもりさせるのはこの現象に基づいているのです。「頂芽優勢」は草本植物ではふつうにみられますが、木本植物では、加齢した木ではなかなか理屈通りに行かないことがあります。それは、栄養条件や、日照条件、光の波長、生育している木々の混み具合などでも影響されるからです。しかし、芽生えの1-2年生の木や、加齢した木でも当年枝などでは、良くみられます。
さて、それでは、「頂芽優勢」はどのようにしてコントロールされているのでしょうか。この現象の解明には分子生物学的な最近の新しい発見などがあって、研究がすすんでいるのですが、ここでは従来の理解について説明することにします。植物の成長を促すホルモンの一つであるオーキシンは茎頂で合成され、下方へ一方向的に輸送されます(極性輸送という)。このオーキシンは腋芽の成長開始を阻害するのです。有力な証拠は、頂芽を切除して、代わりにその切り口に人為的にオーキシンを与えてやると、頂芽優勢が起きることです。この辺りのことは、高校の生物の教科書にはどれでも詳しく書かれていますので、ご参照ください。また、遺伝子組替えで、オーキシンを多量に作るようにオーキシン合成の遺伝子を入れてやったタバコでは枝分かれが少なくなります。また、オーキシンをアミノ酸と結合させてオーキシンの働きをなくしてしまうような遺伝子をいれてやると、頂芽優勢が弱まり、枝分かれが多くなります。他方、もう一つのホルモンであるサイトカイニンは腋芽の成長開始に必要です。成長が止まっている腋芽の先端にサイトカイニンを与えてやると、頂芽のすぐ下にあっても成長が始まります。このように、腋芽の成長には抑制的なオーキシンと促進的なサイトカイニンが絡み合っていると考えられます。その詳しいメカニズムはまだ確かめなければならないことも多く、完全には解明されていません。
ところで、お尋ねに件はサクラですね。多分若木ではないと思いますが、その場合は、先にも述べたように、樹木では草本のように頂芽優勢が明確に出るとは限りません。しかし、原則的には同じ原理が働いていると思います。一本の茎又は枝に腋芽がいくつかできている場合、頂芽に近いほど、成長が抑制されています。頂芽から腋芽までの距離が長い程、頂芽の影響は減じることになります。観察された成長しない腋芽はどの部分のものでしょうか。それに、樹木ではそろそろ花芽ができているものもありますので、注意して下さい。
腋芽の成長に関する質問にお答えします。
腋芽又は側芽の成長調節のメカニズムはかなり複雑で、環境条件や栄養条件などにも影響を受けます。腋芽の成長というとき、腋芽が形成されるのと、それが伸長するのとは別の過程です。形成はふつう茎頂(主軸でも枝でも)の分裂組織の側面で、軸(茎)と葉の上部が角度を成す部分(葉腋という)に起きます。しかし、多くの植物で、成長しきった茎の下の方でも作られることがあります。その場合、休止した状態で取り残されていた分裂組織からできるのだろうといわれています。形成された腋芽はそれぞれに茎頂をもち、主軸の茎頂と同じように葉原基を分化します。腋芽が成長する時は、頂芽の場合と同じです。この場合は枝を形成することになります。伸びた枝は分家した主軸と考えればよく、そこにはまた腋芽ができます。
さて、問題は、成長を始める腋芽とそうでない腋芽はなにがそのようにコントロールしているのかということです。腋芽が成長しないのは成長が抑えられて,停止しているのであり、成長を始めるのはその抑制から解除されたのだと言うことができます。このことは、質問にもありますように、「頂芽優勢」ということと関係があります。一般に、主軸にしろ、副軸(枝)にしろ、頂芽に近い腋芽は成長(伸長)しません。このように、茎の先端の部分が腋芽の成長を抑制することを「頂芽優勢」と呼んでいます。その証拠に頂芽を切除してやれば、腋芽は成長を開始します。庭師が庭の灌木を剪定して、こんもりさせるのはこの現象に基づいているのです。「頂芽優勢」は草本植物ではふつうにみられますが、木本植物では、加齢した木ではなかなか理屈通りに行かないことがあります。それは、栄養条件や、日照条件、光の波長、生育している木々の混み具合などでも影響されるからです。しかし、芽生えの1-2年生の木や、加齢した木でも当年枝などでは、良くみられます。
さて、それでは、「頂芽優勢」はどのようにしてコントロールされているのでしょうか。この現象の解明には分子生物学的な最近の新しい発見などがあって、研究がすすんでいるのですが、ここでは従来の理解について説明することにします。植物の成長を促すホルモンの一つであるオーキシンは茎頂で合成され、下方へ一方向的に輸送されます(極性輸送という)。このオーキシンは腋芽の成長開始を阻害するのです。有力な証拠は、頂芽を切除して、代わりにその切り口に人為的にオーキシンを与えてやると、頂芽優勢が起きることです。この辺りのことは、高校の生物の教科書にはどれでも詳しく書かれていますので、ご参照ください。また、遺伝子組替えで、オーキシンを多量に作るようにオーキシン合成の遺伝子を入れてやったタバコでは枝分かれが少なくなります。また、オーキシンをアミノ酸と結合させてオーキシンの働きをなくしてしまうような遺伝子をいれてやると、頂芽優勢が弱まり、枝分かれが多くなります。他方、もう一つのホルモンであるサイトカイニンは腋芽の成長開始に必要です。成長が止まっている腋芽の先端にサイトカイニンを与えてやると、頂芽のすぐ下にあっても成長が始まります。このように、腋芽の成長には抑制的なオーキシンと促進的なサイトカイニンが絡み合っていると考えられます。その詳しいメカニズムはまだ確かめなければならないことも多く、完全には解明されていません。
ところで、お尋ねに件はサクラですね。多分若木ではないと思いますが、その場合は、先にも述べたように、樹木では草本のように頂芽優勢が明確に出るとは限りません。しかし、原則的には同じ原理が働いていると思います。一本の茎又は枝に腋芽がいくつかできている場合、頂芽に近いほど、成長が抑制されています。頂芽から腋芽までの距離が長い程、頂芽の影響は減じることになります。観察された成長しない腋芽はどの部分のものでしょうか。それに、樹木ではそろそろ花芽ができているものもありますので、注意して下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2006-09-01
勝見 允行
回答日:2006-09-01