一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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アントシアニンの抗酸化力

質問者:   会社員   広田 正宣
登録番号1053   登録日:2006-09-20
アントシアニンの抗酸化力と色の関係を調べております。

アントシアニンと、アントシアニンのアグリコンであるアントシアニジンでは、どちらが抗酸化力が高いでしょうか?
またアントシアニンとアントシアニジンの色の関係ですが、アントシアニンから糖が離れてアントシアニジンになると、退色するでしょうか、色が濃くなる
でしょうか?

また、アントシアニン、アントシアニジンが退色する原因として、高温蒸気を吹き付けた場合、退色の原因になり得ますでしょうか?

質問が雑ぱくで申し訳ないですが、御知見をお借りしたくよろしくお願いします。
広田 正宣 様

 アントシアニンについての広範なご質問を頂きましたが、アントシアニンを含め植物の抗酸化成分について研究されておられる、福山大学生命工学部生物工学科・原口 博行 先生から次の解説を頂きましたのでご覧下さい。なお、本質問コーナーのトップページ質問検索欄でアントシアンの語句で検索していただければ、アントシアニンの植物での機能など、これまでに寄せられた20項目にわたる質問に対する回答がありますので、これらも参考にして下さい。

まず、アントシアニンとそのアグリコンであるアントシアニジンとではどちらの抗酸化力が高いかについてのご質問ですが、アントシアニジンには主なものだけでも6種類の化合物があり、それぞれのアグリコンの様々な位置に様々な糖が結合しているアントシアニンは、現在まで少なくとも100種類が植物に見出されています。そのため、アントシアニンとアントシアニジンの抗酸化力を単純に比較することは困難です。同じアントシアニジンの配糖体でも糖の種類や付加位置により、また、糖に芳香族アシル基が付加している場合も抗酸化力は異なります。
一例として(アグリコンの一つである)シアニジンとシアニジン-3-グルコシドの抗酸化力を、リノール酸の過酸化、リポソームの過酸化、ミクロソームの過酸化、赤血球の過酸化反応などに対する抑制効果で比較した結果によれば、シアニジンはその配糖体に比べ僅かに抗酸化活性が高くなっています。ただ、これは一例にすぎず、芳香族アシル基などが糖に結合していると抗酸化活性は高くなることがよくあり、さらにどのような系を用いて抗酸化力を比較するかによっても異なってきます。
次に、アントシアニンから糖が離れてアントシアニジンになると退色するか、色が濃くなるかというご質問ですが、これについても、アグリコンの種類やどの位置に糖が付加しているかにより異なります。ただ、一つの例として3位に結合した糖に芳香族アシル基が結合していると、青色が濃くなります。また、溶液のpHや共存する金属イオンのキレート効果によっても色が大きく変化します。
最後に、高温蒸気の吹きつけは退色の原因になるかとのことですが、温度によると思います。ちなみに、シアニジン-3-グルコシドの分解点は205℃です。

原口 博行(福山大学生命工学部・生物工学科)
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-11-21