質問者:
教員
自然科学部顧問
登録番号1065
登録日:2006-10-04
群馬県/公立中学校/自然科学部顧問教諭です.みんなのひろば
カラスウリの開花条件
この夏,中学生とカラスウリの栽培観察を行いました.
カラスウリの開花条件について,下記書籍では,体内時計が開花を決めている旨を述べています.
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真船和夫/文 下田智美/絵
『カラスウリのひみつ』わたしの研究5
出版社名 偕成社
出版年月 1997年6月
ISBNコード 4-03-634630-X
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p.41
「カラスウリの花がひらくのは,光や温度の条件によるのではないといえそうです。」
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これに対し,わたしたちの実験・観察では,以下のような条件で開花時刻が変わることを確認しました.
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1.つぼみを暗くすると,開花時刻が早くなる.
2.つぼみに光を当てると,開花時刻が遅れる.
3.つぼみを冷やすと,開花時刻が遅れる.
4.気温が低くて開花時刻が遅くなっているときにつぼみを暖めると,開花が早まる.
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これらのことから,
・カラスウリの開花は,光と温度の両方が関係する.
・カラスウリのつぼみは,光と温度のセンサーを持っている.
と考えています.
カラスウリの開花条件,開花機構については,どのようなことがわかっているのでしょうか.
自然科学部顧問さま
みんなの広場へのご質問有難うございました。担当の柴岡と申します。頂いたご質問の回答をアサガオの花芽形成のお仕事をなさっておられる新潟大学の和田先生にお願いいたしました。和田先生は先生ご自身もおっしゃっておられますように、開花についての分野がご専門ではございませんが、やはり花についてのご研究に長年携わっておられた経験から、私も嬉しくなるような回答をお寄せ下さいました。私も、自分で見たことが、本に書いてあることより本当なんだと思い続けながら、何十年間を過ごしてきました。自分達が観察したことを信じて、観察研究を続けて行って下さい。
自然科学部顧問様
私は花成の研究に携わっていることから、ご質問への回答を担当致しましたが、開花については研究しておりませんので、 カラスウリの開花機構については詳しいことを知りません。少し調べてみましたが、このテーマを扱った論文は見つかりませんでした。花成研究は古くから盛んに行われているのですが、開花については研究が少ないのです。詳細な解析が行われているのはアサガオとオオマツヨイグサくらいでしょうか。
自分の研究テーマに関してどれだけのことがわかっているのかを文献的に調べて、先人の研究成果の上に自分の研究を積み上げて行くのが科学の方法ですが、せっかく生徒さん達と観察を行ったのですから、自分達自身で得た結果を大切にして、カラスウリの開花というものをご自身で考えてみられるとよいと思います。
まず、つぼみを暗くすると開花が早くなり、光を当てると遅れ、つぼみを冷やすと開花が遅れ、暖めると早まるのであれば、これらのことから、カラスウリの開花には光と温度が関係すると結論するのは正しいでしょう。これに対して、参照された本は「カラスウリの開花は体内時計が決めている」としているので、どちらの結論が正しいのか迷われているのだろうと思います。しかし、これらは必ずしも対立する結論ではないかもしれません。なぜなら、皆さんは、光と温度の条件は調べられましたが、生物時計については調べておられません。一方の参照された本を私は読んでいませんので、どのような実験が行われたのかわからないのですが、 光・温度の影響と生物時計の両方を調べているのでしょうか?基本的に生物時計で調節されている現象が、光や温度の影響も受けることは、しばしばあることです。アサガオの開花はその例です。光や温度条件を一定にしておけば、アサガオの開花は生物時計に従って、概日リズムを示します。しかし、1日のうちの夜の時間の長さをいろいろ変えてみると、開花時刻は夜になってから一定時間後、または、夜が終わってから一定時間後というように変化します。また、温度が低くなれば開花時刻は早くなります。カラスウリでも同じようなことがあれば、皆さんの結論も、本に書かれた結論も、両方正しいということになります。植物の見せる反応は複雑ですから、いろいろな視点から考える必要があります。
ちなみに、上に述べたアサガオの開花の仕組みは、ある女流研究者が行った一連の優れた研究の中で明らかになったものです。現在でもしばしば引用される彼女の研究は中学生のときに始めたものでした。同じく中学生である生徒さん達がやられた、今回のカラスウリの研究も大変興味深いものです。生徒さん達に芽生えた科学する心を大切に育て、未来の研究者へと指導して下さることを祈ります。
和田清俊/ペン・ネーム竹能清俊(新潟大学理学部)
みんなの広場へのご質問有難うございました。担当の柴岡と申します。頂いたご質問の回答をアサガオの花芽形成のお仕事をなさっておられる新潟大学の和田先生にお願いいたしました。和田先生は先生ご自身もおっしゃっておられますように、開花についての分野がご専門ではございませんが、やはり花についてのご研究に長年携わっておられた経験から、私も嬉しくなるような回答をお寄せ下さいました。私も、自分で見たことが、本に書いてあることより本当なんだと思い続けながら、何十年間を過ごしてきました。自分達が観察したことを信じて、観察研究を続けて行って下さい。
自然科学部顧問様
私は花成の研究に携わっていることから、ご質問への回答を担当致しましたが、開花については研究しておりませんので、 カラスウリの開花機構については詳しいことを知りません。少し調べてみましたが、このテーマを扱った論文は見つかりませんでした。花成研究は古くから盛んに行われているのですが、開花については研究が少ないのです。詳細な解析が行われているのはアサガオとオオマツヨイグサくらいでしょうか。
自分の研究テーマに関してどれだけのことがわかっているのかを文献的に調べて、先人の研究成果の上に自分の研究を積み上げて行くのが科学の方法ですが、せっかく生徒さん達と観察を行ったのですから、自分達自身で得た結果を大切にして、カラスウリの開花というものをご自身で考えてみられるとよいと思います。
まず、つぼみを暗くすると開花が早くなり、光を当てると遅れ、つぼみを冷やすと開花が遅れ、暖めると早まるのであれば、これらのことから、カラスウリの開花には光と温度が関係すると結論するのは正しいでしょう。これに対して、参照された本は「カラスウリの開花は体内時計が決めている」としているので、どちらの結論が正しいのか迷われているのだろうと思います。しかし、これらは必ずしも対立する結論ではないかもしれません。なぜなら、皆さんは、光と温度の条件は調べられましたが、生物時計については調べておられません。一方の参照された本を私は読んでいませんので、どのような実験が行われたのかわからないのですが、 光・温度の影響と生物時計の両方を調べているのでしょうか?基本的に生物時計で調節されている現象が、光や温度の影響も受けることは、しばしばあることです。アサガオの開花はその例です。光や温度条件を一定にしておけば、アサガオの開花は生物時計に従って、概日リズムを示します。しかし、1日のうちの夜の時間の長さをいろいろ変えてみると、開花時刻は夜になってから一定時間後、または、夜が終わってから一定時間後というように変化します。また、温度が低くなれば開花時刻は早くなります。カラスウリでも同じようなことがあれば、皆さんの結論も、本に書かれた結論も、両方正しいということになります。植物の見せる反応は複雑ですから、いろいろな視点から考える必要があります。
ちなみに、上に述べたアサガオの開花の仕組みは、ある女流研究者が行った一連の優れた研究の中で明らかになったものです。現在でもしばしば引用される彼女の研究は中学生のときに始めたものでした。同じく中学生である生徒さん達がやられた、今回のカラスウリの研究も大変興味深いものです。生徒さん達に芽生えた科学する心を大切に育て、未来の研究者へと指導して下さることを祈ります。
和田清俊/ペン・ネーム竹能清俊(新潟大学理学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-10-13
柴岡 弘郎
回答日:2006-10-13