質問者:
公務員
alsomitra
登録番号1079
登録日:2006-10-12
時々拝見させて頂いて勉強させて頂いております。紅葉と葉緑素の分解についていろいろな説明を見ましたが、努力不足で疑問点が未だ解決されません。葉緑素、あるいは葉緑体は生育期間中に分解再生されているのでしょうか。そのサイクルは夏期には何日ぐらいなのでしょうか
紅葉
alsomitra さん
本コーナーに質問をありがとうございました。
この質問には、静岡大学で葉緑素(クロロフィル)の分解機構について研究をされている塩井祐三先生から回答をいただきました。生体から抽出されたクロロフィルは、例えばアセトンなどの有機溶媒中では光に敏感で、直ぐに分解されてしまいます。しかし、光の下で生活する植物の体内では、不思議なことに非常に安定です。なお、クロロフィルの分解に関しては本コーナーで何度か取り挙げられていると思いますので、あわせてご参考にして下さい。
植物(樹木)の葉のクロロフィル(葉緑素) 量を詳しく測定しますと、特に気温変動が激しい時に顕著ですが、クロロフィル量に増減の変動が見られます。このことは、クロロフィルの一部が分解されたり合成されたりしていることを示しています。つまり、質問の前半部分については、植物の生育時にクロロフィルは分解再生されており、我々が見ているのは分解と合成を足した和であるということになります。成熟した葉では、後で述べるように分解の速度が低く、クロロフィル量の変動はあまりありません。ところが、秋になると、落葉樹では合成に比べて大きな分解が起こりますので緑の消失が見られます。葉緑体については、通常の生育時では成熟した葉の細胞1個あたりの葉緑体数に大きな変動がないことから,その数は大きくは変わっていないと考えられます。秋にクロロフィルが分解される時は、葉緑体もゲロントプラスト(老化葉緑体)へと変化し数も減少します。
クロロフィルのどれくらいの量が1日当たり分解されたり合成されたりしているかについては、高等植物では同位体による追跡実験が困難なことからよく分かっていません。地球上でのクロロフィルの分解のサイクルについては、英国の研究者らによって、いくつかの仮定を基にして、地上部では年間0.3回、主に海洋では年間44.4回の代謝回転が起こっているということが報告されています。地上部で代謝回転の速度が低いのは常緑樹があること、一方、海洋で代謝回転が速いのは寿命が短い藻類が多いことによります。
塩井 祐三(静岡大学理学部)
本コーナーに質問をありがとうございました。
この質問には、静岡大学で葉緑素(クロロフィル)の分解機構について研究をされている塩井祐三先生から回答をいただきました。生体から抽出されたクロロフィルは、例えばアセトンなどの有機溶媒中では光に敏感で、直ぐに分解されてしまいます。しかし、光の下で生活する植物の体内では、不思議なことに非常に安定です。なお、クロロフィルの分解に関しては本コーナーで何度か取り挙げられていると思いますので、あわせてご参考にして下さい。
植物(樹木)の葉のクロロフィル(葉緑素) 量を詳しく測定しますと、特に気温変動が激しい時に顕著ですが、クロロフィル量に増減の変動が見られます。このことは、クロロフィルの一部が分解されたり合成されたりしていることを示しています。つまり、質問の前半部分については、植物の生育時にクロロフィルは分解再生されており、我々が見ているのは分解と合成を足した和であるということになります。成熟した葉では、後で述べるように分解の速度が低く、クロロフィル量の変動はあまりありません。ところが、秋になると、落葉樹では合成に比べて大きな分解が起こりますので緑の消失が見られます。葉緑体については、通常の生育時では成熟した葉の細胞1個あたりの葉緑体数に大きな変動がないことから,その数は大きくは変わっていないと考えられます。秋にクロロフィルが分解される時は、葉緑体もゲロントプラスト(老化葉緑体)へと変化し数も減少します。
クロロフィルのどれくらいの量が1日当たり分解されたり合成されたりしているかについては、高等植物では同位体による追跡実験が困難なことからよく分かっていません。地球上でのクロロフィルの分解のサイクルについては、英国の研究者らによって、いくつかの仮定を基にして、地上部では年間0.3回、主に海洋では年間44.4回の代謝回転が起こっているということが報告されています。地上部で代謝回転の速度が低いのは常緑樹があること、一方、海洋で代謝回転が速いのは寿命が短い藻類が多いことによります。
塩井 祐三(静岡大学理学部)
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2006-10-17
佐藤 公行
回答日:2006-10-17