一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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キウイのプロテアーゼ

質問者:   大学生   ゆい
登録番号1081   登録日:2006-10-14
トピックスの液胞が興味深かったです。プロテアーゼの働きも分かりました。キウイやパイナップルにはシステインプロテアーゼが多く含まれていますが、果実内のタンパク質は分解しないのですか。多く含まれている理由を教えてください。トリプシノーゲンのような前駆体があって、活性化されるのですか。
よろしくお願いします。
ゆい 様

キウイ、パイナップルに多量に含まれているプロテアーゼが、なぜ、これら果実のタンパク質を分解しないのかのご質問ですが、これは基本的には果実が成熟する間、これらプロテアーゼが細胞中で液胞に局在し、細胞に含まれる大部分のタンパク質と接触できないためです。液胞の中にはプロテアーゼ、アミラーゼなどの加水分解酵素が多く含まれていますが、これらは果実が成熟している段階、すなわち、細胞が活動している段階では、細胞の中に含まれるタンパク質やデンプンなどを分解することはありません。それは、これら細胞の活動を支えている機能性タンパク質(酵素)は細胞の別の細胞小器官(ミトコンドリアなど)に分布し、液胞には存在していないためです。果実が成熟を終え細胞の寿命が終わった時点になると、液胞が壊れその中に含まれていたプロテアーゼが働いて細胞内タンパク質を分解しアミノ酸となり、新しい細胞や組織を作るのに利用されます。本質問コーナーで、液胞を検索語として検索をクリックすれば、液胞の植物でのいろんな役割がこれまで議論されていますので、ご覧ください。
パイナップルにはプロテアーゼが多量に含まれ、これらは根茎に由来するステムブロメライン(糖タンパク質)と、果実から分離されるフルートブロメライン(糖を結合していないタンパク質)として、産業用(肉を柔らかくする、タンパク質の加水分解用など)に広く利用されています。プロテアーゼとしの性質も詳しく研究されていますが、トリプシノーゲンに相当するブロメラインの前駆体は見つけられていません。ステーキの上にパイナップルのスライスを載せる場合がありますが、これはブロメラインのプロテアーゼ作用を期待してのことです。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2006-10-19