一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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水圏での植物への必要栄養素について

質問者:   公務員   P77
登録番号1101   登録日:2006-11-04
初めて投稿いたします。
現在、沈水性植物を育てておりまして、園芸用品の栄養素などを養分として希釈して使用しております。
そこでお聞きしたいのですが、

水中での沈水性植物及び浮遊性植物の栄養素の吸収方法ですが、

①吸収される必要栄養素はどこで、どのような循環を経て、
②どのような形態で、
③主としてどこから吸収されるのでしょうか?

水圏の植物に特化した書籍で、詳しく書かれたものを
見つける事が出来ずに、困っております。

是非ご教授ください。



※①〜③について

例えばNであれば、アンモニウムイオンもしくは硝化を経て硝酸態窒素として吸収される等の、その他の多量元素及び微量元素の水中での状態等が知りたいです。
P77 さま

ご質問の中の栄養素はヒトが摂取するビタミンのような意味にもとられがちであり、植物は水生植物も含め、14種の無機元素が適当な割合で与えれば光合成によって生育できますので、ここでは、無機養分を栄養素の代わりに用います。

水生植物の無機養分の吸収、移動は基本的に、陸上植物と同じ機構で進行します。陸上植物の無機養分の吸収、移動、それらの機構などについては桜井ら:植物生理学入門(培風館)(2001)、植物栄養・肥料の事典(朝倉書店)(2002)などに解説されていますので詳細についてはこれらをご覧下さい。水に溶けた14種の無機養分は全てイオンとして細胞に吸収されますが、ご質問にあります窒素はアンモニウムイオン、硝酸塩イオン、または、両イオンを含む形で市販の園芸用の無機養分に含まれています。アンモニウムイオン、硝酸塩イオンはそれぞれ(+)イオン、(-)イオンであるため吸収機構は異なります。硝酸塩イオンが吸収されると、細胞内でアンモニウムイオンに還元されてからアミノ酸の合成などに利用されます。アンモニウムイオンが吸収されれば、直接にアミノ酸などの合成に利用できます。しかし、アンモニウムイオンの細胞内濃度が高くなると毒性があるため、イネのように毒性を示しにくい好アンモニウム植物を除き、アンモニウムイオンのみの無機養分液は一般に好ましくありません。硝酸塩イオンを吸収して細胞に貯え、アミノ酸などの合成の必要に応じて硝酸塩イオンをアンモニウムイオンに還元するのがほとんどの植物の無機窒素同化の経路です。硝酸塩イオンは濃度が高くなってもアンモニウムイオンに比べ毒性が低く、ほとんどの植物はこの様に硝酸塩イオン→アンモニウムイオン→アミノ酸の経路で窒素を同化しています。

本質問コーナーの登録番号0030、登録番号0059、登録番号0218、登録番号0232、登録番号0399、登録番号0938、登録番号1100の回答にも、どの器官で無機養分が吸収されるかを含め、水生植物のさまざまの性質が解説されていますので参考にして下さい。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2012-08-25
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