質問者:
一般
のりこ
登録番号1103
登録日:2006-11-07
初めまして、りんどう栽培を始めて2年目の農業新米者です。今年は初出荷でしたが、クロマルハナバチと言うミツバチの一種が豪雨後の晴れ間に一群となって現れ、白いりんどうの花が赤紫に変色してしまい出荷できなくなりました。花蜜の匂いの強弱
近くには民家が沢山あり、各家の庭には色んな種類の花が植えられています。しかし、我が家のりんどう圃場にだけハチが集中してしまったようです。
花蜜の匂いを嗅ぎつけハチがやってきたと思うのですが、花蜜の匂いの強弱は花の種類によって違うのでしょうか?そしてもし出来ることなら、ハチが寄ってこないような花蜜の匂いを少なくする方法などありましたら、ご教示いただけたら嬉しいです。
のりこさま
みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を植物と昆虫との関係についてのご研究をなさっておられる京都大学の高林純示先生にお願いいたしましたところ、高林先生は花粉媒介についての専門家から情報を集め、それをまとめ、以下のような回答をお寄せ下さいました。ご参考になれば幸いです。
大変興味深い現象でお困りになられたようですね。なぜ赤紫になったのでしょう。さて、私自身はお困りの件に関して適切な回答ができないと判断し、花粉媒介に詳しい方々に聞いてみました。以下に頂いた情報を独断でまとめます。
◎マルハナバチが大きな群れをつくって花を訪れることはまずないので、ひとつには、ニホンミツバチが巣をすててコロニーごと移動している最中にあたったのでは、という可能性があるかもしれません。今の季節だと分封していることはありませんが、ニホンミツバチは、条件が悪いと巣をすててあたらしい場所に移動することがあります。ニホンミツバチは養蜂で使われるセイヨウミツバチよりも全体的にくろっぽいです。
◎クロマルハナバチは、草原性の種類だといわれていて、普通はトラマルハナバチやコマルハナバチに比べ、それほど数の多くないマルハナバチです。京都府では独自の基準で府内の絶滅危惧種としています。
ミツバチ亜科のハナバチは巣に戻ってきた探索蜂の体に付いた花の匂いを頼りに、多くの餌が得られる花の種類を判断します。この性質を利用して、巣の入り口に特定の種類の花を敷き詰めて巣に戻る探索蜂のすべてにその種の花の匂いをつけると、その巣の働き蜂はすべてその種の花から蜜をあつめるようになります。市販の蜂蜜のうち花の種類を特定している蜂蜜はこのようにして集められます。しかしながらマルハナバチ亜科のハナバチ(クロマルハナバチもその仲間です)には、このような巣仲間との情報交換は無いと考えられています。実際、特定の花のにおいでマルハナバチが群れて集まってくるという話は聞いたことがありません。
◎ミツバチ科ハナバチはマルハナバチ亜科のものも含めて花の匂いと資源量を関連付けて記憶、学習することが知られています。この場合、「花の匂い」は、必ずしも、「花蜜の匂い」とは限りません。花蜜以外にも、通常、花からは、各種匂い物質が出ており、これらをあわせた「花の匂い」が記憶、学習の対象となり、新たな餌探索に利用されます。
◎「花の匂い」の強弱は、種によっても、また、品種によっても、異なります。ただ、高等なハナバチは単純に匂いの強い花に訪れるわけではなく、過去に多くの餌が得られた花と同じ匂いの花を探索します。
したがって、単に匂いを弱くする事は、蜂を少なくするのに必ずしも効果的ではありません。むしろ、ハナバチが大量訪花しそうな日に殺虫剤を散布しておく方が現実的です。
ハナバチは餌の匂いを学習するのと同様に弱毒性殺虫剤の匂いも学習できるので、過去にピレスロイド系毒物の混入した蜜を吸って苦しんだ経験のある蜂は、似た匂いのピレスロイド系農薬が散布された花には近寄ってきません。
◎花卉園芸学は、必ずしも専門では無いので、定量的な示唆は控えますが、一般に花卉園芸におけるハナバチの害には、合成ピレスロイド系農薬が有効な事が多いそうです。チョウやガの幼虫に対しては接触毒作用しか期待できない程度の濃度でも、ハナバチ成虫には忌避効果があります。ただし、多くの「品種もの」の園芸花卉植物は、農薬害による花の変色が出やすいので濃度や散布頻度には要注意となります。
高林 純示(京都大学)
みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問の回答を植物と昆虫との関係についてのご研究をなさっておられる京都大学の高林純示先生にお願いいたしましたところ、高林先生は花粉媒介についての専門家から情報を集め、それをまとめ、以下のような回答をお寄せ下さいました。ご参考になれば幸いです。
大変興味深い現象でお困りになられたようですね。なぜ赤紫になったのでしょう。さて、私自身はお困りの件に関して適切な回答ができないと判断し、花粉媒介に詳しい方々に聞いてみました。以下に頂いた情報を独断でまとめます。
◎マルハナバチが大きな群れをつくって花を訪れることはまずないので、ひとつには、ニホンミツバチが巣をすててコロニーごと移動している最中にあたったのでは、という可能性があるかもしれません。今の季節だと分封していることはありませんが、ニホンミツバチは、条件が悪いと巣をすててあたらしい場所に移動することがあります。ニホンミツバチは養蜂で使われるセイヨウミツバチよりも全体的にくろっぽいです。
◎クロマルハナバチは、草原性の種類だといわれていて、普通はトラマルハナバチやコマルハナバチに比べ、それほど数の多くないマルハナバチです。京都府では独自の基準で府内の絶滅危惧種としています。
ミツバチ亜科のハナバチは巣に戻ってきた探索蜂の体に付いた花の匂いを頼りに、多くの餌が得られる花の種類を判断します。この性質を利用して、巣の入り口に特定の種類の花を敷き詰めて巣に戻る探索蜂のすべてにその種の花の匂いをつけると、その巣の働き蜂はすべてその種の花から蜜をあつめるようになります。市販の蜂蜜のうち花の種類を特定している蜂蜜はこのようにして集められます。しかしながらマルハナバチ亜科のハナバチ(クロマルハナバチもその仲間です)には、このような巣仲間との情報交換は無いと考えられています。実際、特定の花のにおいでマルハナバチが群れて集まってくるという話は聞いたことがありません。
◎ミツバチ科ハナバチはマルハナバチ亜科のものも含めて花の匂いと資源量を関連付けて記憶、学習することが知られています。この場合、「花の匂い」は、必ずしも、「花蜜の匂い」とは限りません。花蜜以外にも、通常、花からは、各種匂い物質が出ており、これらをあわせた「花の匂い」が記憶、学習の対象となり、新たな餌探索に利用されます。
◎「花の匂い」の強弱は、種によっても、また、品種によっても、異なります。ただ、高等なハナバチは単純に匂いの強い花に訪れるわけではなく、過去に多くの餌が得られた花と同じ匂いの花を探索します。
したがって、単に匂いを弱くする事は、蜂を少なくするのに必ずしも効果的ではありません。むしろ、ハナバチが大量訪花しそうな日に殺虫剤を散布しておく方が現実的です。
ハナバチは餌の匂いを学習するのと同様に弱毒性殺虫剤の匂いも学習できるので、過去にピレスロイド系毒物の混入した蜜を吸って苦しんだ経験のある蜂は、似た匂いのピレスロイド系農薬が散布された花には近寄ってきません。
◎花卉園芸学は、必ずしも専門では無いので、定量的な示唆は控えますが、一般に花卉園芸におけるハナバチの害には、合成ピレスロイド系農薬が有効な事が多いそうです。チョウやガの幼虫に対しては接触毒作用しか期待できない程度の濃度でも、ハナバチ成虫には忌避効果があります。ただし、多くの「品種もの」の園芸花卉植物は、農薬害による花の変色が出やすいので濃度や散布頻度には要注意となります。
高林 純示(京都大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-11-13
柴岡 弘郎
回答日:2006-11-13