一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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黄葉と紅葉について

質問者:   会社員   Rika
登録番号1107   登録日:2006-11-14
紅葉の季節がやってきたので、落ち葉を採集して、標本を作ろうと思っています。そこで、仕組みを調べています。自分なりにも理解はできてきたのですが、疑問に思うことがあるのでぜひ教えていただきたく思います。
①紅葉は、必ず黄葉を経ておこるのでしょうか。私の勝手な記憶では、緑から突然赤になるものもある気がします。
②黄葉して落葉する葉にも離層が形成されるのですよね?アントシアニンの生成が間に合わなかったということですか?それとももともと紅葉しない仕組みになっているのでしょうか。(イチョウが紅葉しない理由など)
よろしくお願い致します。
Rika さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。紅葉の季節になり、山々は多彩な色調に彩られています。どうして、このような多彩な色が出るのだろうと思うのは誰しも同じです。さて、ご質問の順に、お答えいたします。
1.紅葉は必ず黄葉を経て起こるものではありません。黄色の色素(カロテノイド)は、もともと葉緑体の中にありますので、クロロフィル(葉緑素)が分解してもカロテノイドの分解は遅いため黄色が目立つので黄葉となります。カロテノイド色素が新たに生成、増加するという報告は見つかりません。一方、紅葉はアントシアニン色素が新たに生成、蓄積するためです。そのため、クロロフィルが分解しはじめる時期、分解の速さとアントシアン色素が生成する時期、生成量との関係で、黒ずんだ赤色、濃い赤色、鮮やかな紅色、薄い紅色、黄色などに見えることになります。黄葉を経てから紅葉になる場合は、クロロフィルの分解がかなり進み、黄色がかった葉になってからアントシアン色素の生成がはじまればあり得ます。しかし、このような例は、あまり見かけません。
2.アントシアン色素の生成が起こらない場合には、黄葉となります。アントシアン色素の生成には、たくさんの遺伝子が関与していますので、その中のどの遺伝子が働かなくなっても、アントシアン色素は生成されませんから、黄葉になります。イチョウなどはそのような植物と考えられます。落葉樹に限らず、離層を形成して落葉する植物はたくさんあります(常緑樹の葉も離層を形成して落葉します)離層形成がはじまる時期が、どんな仕組みで決まっているのかはまだ分かっていませんが、紅葉が現れる前に離層が形成し始め、物質の移動がなくなると考えられています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-11-15
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