一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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伐採の後

質問者:   一般   カンバ
登録番号1108   登録日:2006-11-16
自分が管理する森林を伐採して跡地に広葉樹林を植えたいのですが、そのついでに落葉樹林を作りたいのです。
ちなみに場所は三重県で自然林はウバメガシやタブ、シイ、カシなどが残る温暖な土地です。
その落葉樹林の内容は、コナラやクリ、カエデなどにするつもりですが、ブナやミズナラといった冷温帯の木々も入れようと思います。
三重県の温暖な気候でも自然に育っていってくれるのでしょうか?
あと、ブナやミズナラは成長が遅いと聞きましたが、比較的成長の早いコナラなどといった雑木と比べてどうでしょうか?
カンバさま

 みんなの広場へのご質問ありがとうございました。頂いたご質問を「寒冷地の落葉樹は温暖な場所で生きていけるかどうか」という一般的なご質問として受け止め、東京大学理学部日光植物園の館野正樹先生にご回答をお願いいたしましたところ、以下のようなご回答をお寄せ下さいました。ご参考になるものと思います。

館野先生のご回答

 落葉樹は様々な場所に生育しています。屋久島の照葉樹林でも亜高山帯の針葉樹林でも、よく見ると、落葉樹がモザイク状に混在していることがわかります。落葉樹の多くは、森林内の明るいギャップでは常緑樹よりも急速に成長するため、ギャップができると真っ先に林冠に到達するからです。屋久島の常緑樹林の中のギャップの観察例ですが、落葉樹であるアブラギリは発芽後7,8年で高さ12m程度の林冠に到達していました。ただ、寿命の短いものが多く、一時的に林冠を占有してもそのうちに常緑樹に取って代わられるものと考えられます。
 様々な場所に生育している落葉樹ですが、寒冷地の落葉樹であるブナやミズナラが温暖な場所で生きていけるかというと、そう簡単ではないかもしれません。私個人の経験ですが、中学生のときにシラカンバとブナの種子を手に入れ、関東地方の平野部で育てはじめました。シラカンバは非常に速く成長しました。しかし、15年ほどたったとき、根元に虫が侵入してしまい、材が食われて倒れてしまいました。ブナの方はシラカンバよりはゆっくりでしたが、針葉樹よりは速く成長しました。25年ほどたったとき、やはり材を虫に食われてしまい、立ち枯れしてしまいました。寒冷地の落葉樹が温暖な場所で材を食われるということは、私の勤務している植物園でもよく見られるそうです。
 落葉樹の分布域がどのようなしくみで決まっているのかということについては、決定的なことを示す研究はいまだにありません。もしかすると、種の分布の南限は、上に述べたような食害に対する防御能力との関係で説明することができるのかもしれません。

館野 正樹(東京大学理学部日光植物園)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-11-22
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