質問者:
その他
成田 恵
登録番号0112
登録日:2004-08-10
はじめまして、私は小学校の教員をしている者です。みんなのひろば
植物と温度との関係を実験で調べたいのですが・・・
4年生の「季節と生き物」という年間を通しての単元についてなのですが、春から子どもたちと「なぜ今芽が出たり、成長・活動したりするのか?」という疑問をもとに、動物や植物の観察をしてきました。
そこから、「きっと温度が関係しているんじゃないか?」という考えが濃くなってきたのです。
そこで、観察を通して知ることと同時に、目の前の実験でもそのことが証明できないかと、教材を探しています。
・・・が、植物が特に困っています。
「①オジギソウを低温にし実験する
②ガザニアを常温と低温にし、花の開閉を比較する
③チューリップの球根を低温処理し、花芽を観察する
④ハエトリソウを常温と低温にし、開閉を比較する」事を考えています。
ぜひ、植物と温度との関係がわかる植物はないでしょうか?
実は、10月に全国理科研究大会を控えています。何とか、8月中までにお返事、ご助言いただければと思います。よろしくお願いいたします。
*年間を通しての観察は、もちろん大切に時間をかけて行きたいと思っていま すが、植物にも温度が関係しているということを、目の前で実証すること¥で、理科(植物)の不思議さ、楽しさに子どもたちが触れることができればと思っています。よろしくお願い致します。
成田 恵様
成田さんがおっしゃる通り、植物の様々な生命現象には周りの温度が大きく関わっています。僕は、「どうして寒いところでも平気な植物と生きていけない植物があるのか?」ということに興味があり、研究しています。また、同じ植物でも、夏の状態と冬の状態では寒さに耐える能力が異なっているのですが、その仕組みがどうなっているのかということにも興味があります。そのようなわけで、成田さんの質問に対する回答も低温に関係してしまいますが、ご了承ください。
植物に対する温度の影響を見るために成田さんが提案している4つのことは、いずれも温度の影響を受ける現象ですので、結果に違いが出てくると予想されます。でも、温度の影響を見るためには、長い時間が必要な場合や他の条件が影響すること(例えば、オジギソウやハエトリソウでは接触刺激など)があり、温度の影響に関して明確な答えを得るのが難しいかもしれません。それに変わる下のような実験はいかがでしょうか?
実験1. パンジーの種子の発芽実験
パンジーなどの種子は、発芽のためには低温条件が必要です。
普通に土に種子をまき、水をあげたあとで、ビニール袋に入れて乾かないようにして、冷蔵庫に5日間入れる。そのあと、室温で育てる。低温処理をしないパンジー種子の実験対照区は、冷蔵庫から種子を取り出した時に準備し、室温で生育させる時間を同じにして観察する。
(注: パンジーの種子は、低温処理していないものを準備する必要があります。種子を購入する時に確かめてください。)
実験2. 種子の発芽過程の観察
植物の生長は温度の影響を大きく受ける。
例えば、レタスやインゲンマメの種子を室温と冷蔵庫(できれば、15℃とか20℃という部屋があればいいのですが)で発芽させて、その生長を比べる。あるいは、室温である程度発芽させてから、一部を冷蔵庫に移して観察するのでも良いかもしれません(次の実験と似てくる)。
実験3. モヤシは低温に弱いことの観察
低温に弱い植物と強い植物が存在する。
モヤシマメ(低温に弱い)とエンドウ(低温に強い)を光のある条件で普通に発芽させ、10日間程度生長させる。その後、冷蔵庫(氷の中に入れられるのならさらに良い)で処理する。一定時間後に取り出して室温に戻して観察する(2、3日)。予想される結果は、以下の通り。
1日処理: 若干の成長が遅れ(エンドウと変わらない)
3日処理: 成長遅れ(エンドウも若干遅れるが、その後回復する)
7日処理: 死んでしまう(エンドウは死なない)
実験4. 花の開閉に対する温度の影響
開花に温度が影響する植物も存在する。
マツバボタンは、午前中の花の開閉が温度で制御されているそうなので、冷蔵庫に入れたり、室温に戻したりして開閉度を見る。冷蔵庫では花が閉じ、外に出すと、花が開く。何度か繰り返すこともできる。ただし、午後になるとその反応は鈍くなるらしい。
(注:チューリップでも同じような実験はできますが、1個体当たりの花の数が少ないので、客観的な実験をするには花数が多いマツバボタンが適しているかもしれません。)
植物が生育温度を極端にはずれた温度に遭遇した場合、傷害を受けて死んでしまうのは早い現象であることが多いのですが、死なない程度の温度が生長に影響を与える場合は時間がかかってしまいます。上に上げた4つの実験も少し時間がかかるかもしれません。
でも、逆に、植物が生育温度からはずれた気温を利用している例もあります。実験1のような発芽に低温を要求することもその例ですが、他にも、サクラやリンゴなどは、冬の寒さがないと花を咲かせることができません。また秋まきのコムギなどもその例です。ですから、ヌクヌクといつも快適な温度で生活しているのが良いというわけではないのです。
では、実験の成功をお祈りしています。結果が出たら知らせてください。楽しみにしています。
成田さんがおっしゃる通り、植物の様々な生命現象には周りの温度が大きく関わっています。僕は、「どうして寒いところでも平気な植物と生きていけない植物があるのか?」ということに興味があり、研究しています。また、同じ植物でも、夏の状態と冬の状態では寒さに耐える能力が異なっているのですが、その仕組みがどうなっているのかということにも興味があります。そのようなわけで、成田さんの質問に対する回答も低温に関係してしまいますが、ご了承ください。
植物に対する温度の影響を見るために成田さんが提案している4つのことは、いずれも温度の影響を受ける現象ですので、結果に違いが出てくると予想されます。でも、温度の影響を見るためには、長い時間が必要な場合や他の条件が影響すること(例えば、オジギソウやハエトリソウでは接触刺激など)があり、温度の影響に関して明確な答えを得るのが難しいかもしれません。それに変わる下のような実験はいかがでしょうか?
実験1. パンジーの種子の発芽実験
パンジーなどの種子は、発芽のためには低温条件が必要です。
普通に土に種子をまき、水をあげたあとで、ビニール袋に入れて乾かないようにして、冷蔵庫に5日間入れる。そのあと、室温で育てる。低温処理をしないパンジー種子の実験対照区は、冷蔵庫から種子を取り出した時に準備し、室温で生育させる時間を同じにして観察する。
(注: パンジーの種子は、低温処理していないものを準備する必要があります。種子を購入する時に確かめてください。)
実験2. 種子の発芽過程の観察
植物の生長は温度の影響を大きく受ける。
例えば、レタスやインゲンマメの種子を室温と冷蔵庫(できれば、15℃とか20℃という部屋があればいいのですが)で発芽させて、その生長を比べる。あるいは、室温である程度発芽させてから、一部を冷蔵庫に移して観察するのでも良いかもしれません(次の実験と似てくる)。
実験3. モヤシは低温に弱いことの観察
低温に弱い植物と強い植物が存在する。
モヤシマメ(低温に弱い)とエンドウ(低温に強い)を光のある条件で普通に発芽させ、10日間程度生長させる。その後、冷蔵庫(氷の中に入れられるのならさらに良い)で処理する。一定時間後に取り出して室温に戻して観察する(2、3日)。予想される結果は、以下の通り。
1日処理: 若干の成長が遅れ(エンドウと変わらない)
3日処理: 成長遅れ(エンドウも若干遅れるが、その後回復する)
7日処理: 死んでしまう(エンドウは死なない)
実験4. 花の開閉に対する温度の影響
開花に温度が影響する植物も存在する。
マツバボタンは、午前中の花の開閉が温度で制御されているそうなので、冷蔵庫に入れたり、室温に戻したりして開閉度を見る。冷蔵庫では花が閉じ、外に出すと、花が開く。何度か繰り返すこともできる。ただし、午後になるとその反応は鈍くなるらしい。
(注:チューリップでも同じような実験はできますが、1個体当たりの花の数が少ないので、客観的な実験をするには花数が多いマツバボタンが適しているかもしれません。)
植物が生育温度を極端にはずれた温度に遭遇した場合、傷害を受けて死んでしまうのは早い現象であることが多いのですが、死なない程度の温度が生長に影響を与える場合は時間がかかってしまいます。上に上げた4つの実験も少し時間がかかるかもしれません。
でも、逆に、植物が生育温度からはずれた気温を利用している例もあります。実験1のような発芽に低温を要求することもその例ですが、他にも、サクラやリンゴなどは、冬の寒さがないと花を咲かせることができません。また秋まきのコムギなどもその例です。ですから、ヌクヌクといつも快適な温度で生活しているのが良いというわけではないのです。
では、実験の成功をお祈りしています。結果が出たら知らせてください。楽しみにしています。
岩手大学寒冷バイオシステム研究センター
上村 松生
回答日:2007-08-06
上村 松生
回答日:2007-08-06