質問者:
一般
エゾマタギ
登録番号1120
登録日:2006-11-30
東北の植生について質問したいのですが、東北の森と言ったらブナ林が有名ですが、平地での分布はどのようになっているのですか?東北地方の潜在植生
福島辺りは暖帯落葉樹林というのはわかるのですが、標高500メートル辺りからブナ林が出現や、かつて東北地方の平地のほとんどがブナ林だったなど、資料によって書いてある事が違います。
以前山形の酒田市に行った事があるのですが、団地の脇の雑木林にコナラやカエデに混じってちょくちょくブナが生えてました。だから本当は平地にもブナ林はあるのだけど、自然破壊の過程で山地のみにしか残っていないと考えてよいのでしょうか?
後、ミズナラは福島の浜通りや、新潟の平地のような温暖な場所から、北海道や樺太のような寒冷な場所まであると聞くので、ブナよりも分布域が広いと思うのですがそうなのですか?
エゾマタギさま
みんなの広場へのご質問ありがとうございました。お待たせいたしましたが、回答をお届けします。頂いたご質問の回答を東京大学の大沢雅彦先生にお願いしましたが、先生は野外調査とかシンポジウムとか非常にお忙しく、この度ようやく、ご回答をお寄せくださいました。
大沢先生のご回答
東北地方といっても緯度にして北緯37度から42度近くまでありますから、5〜600kmはあるわけで、温度差にすれば6℃、標高1000mの違いに相当します。つまり日本の山の垂直分布で一つの植生帯の幅ほどあるわけです。東北のどこと特定しなければ植生を特定できないし、福島と酒田と下北では当然違います。福島辺りであれば平地でもスダジイの北限がありますし、角田市の斗蔵山にはウラジロガシ林が南斜面に見られますが、その周辺にはイヌブナももちろん生えています。酒田にはタブノキの北限がありますし、三陸海岸にもツバキが北上しています。こうした移行帯付近では斜面の向きによっても植生が変化します。白神山地ではブナ林の下限は300m、上限は1200m付近です。東北の低地部は常緑広葉樹林から落葉広葉樹林に移行する部分で、上述したように微気候、地形によって両方の植生がモザイクになっていることもあります。また、北上山地のように古くからたたら製鉄のための薪炭林として伐採されたり、焼畑、林内放牧などで人手が入っている地域も多く、人手が入る前の植生がどのようであったかは、さまざまな研究者がいろいろな説を唱えています。大雑把に言えば、移行帯のマトリックスを構成しているのはいわゆる中間温帯林といわれるものです。シデ類、ミズナラ、クリ、コナラ、アカマツ、ケヤキなどの落葉樹を主体に、一部モミ、スギ、ツガなどの温帯性針葉樹も交えているような森林です。
大沢 雅彦(東京大学)
みんなの広場へのご質問ありがとうございました。お待たせいたしましたが、回答をお届けします。頂いたご質問の回答を東京大学の大沢雅彦先生にお願いしましたが、先生は野外調査とかシンポジウムとか非常にお忙しく、この度ようやく、ご回答をお寄せくださいました。
大沢先生のご回答
東北地方といっても緯度にして北緯37度から42度近くまでありますから、5〜600kmはあるわけで、温度差にすれば6℃、標高1000mの違いに相当します。つまり日本の山の垂直分布で一つの植生帯の幅ほどあるわけです。東北のどこと特定しなければ植生を特定できないし、福島と酒田と下北では当然違います。福島辺りであれば平地でもスダジイの北限がありますし、角田市の斗蔵山にはウラジロガシ林が南斜面に見られますが、その周辺にはイヌブナももちろん生えています。酒田にはタブノキの北限がありますし、三陸海岸にもツバキが北上しています。こうした移行帯付近では斜面の向きによっても植生が変化します。白神山地ではブナ林の下限は300m、上限は1200m付近です。東北の低地部は常緑広葉樹林から落葉広葉樹林に移行する部分で、上述したように微気候、地形によって両方の植生がモザイクになっていることもあります。また、北上山地のように古くからたたら製鉄のための薪炭林として伐採されたり、焼畑、林内放牧などで人手が入っている地域も多く、人手が入る前の植生がどのようであったかは、さまざまな研究者がいろいろな説を唱えています。大雑把に言えば、移行帯のマトリックスを構成しているのはいわゆる中間温帯林といわれるものです。シデ類、ミズナラ、クリ、コナラ、アカマツ、ケヤキなどの落葉樹を主体に、一部モミ、スギ、ツガなどの温帯性針葉樹も交えているような森林です。
大沢 雅彦(東京大学)
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-12-21
柴岡 弘郎
回答日:2006-12-21