一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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ヒヤシンスの根端の色の違い

質問者:   大学生   まり
登録番号1126   登録日:2006-12-10
生物の実験で、体細胞分裂における染色体の形態変化の観察を行ったのですが、成長点での根端に近い白い部分とそれより上の半透明の部分との色の違いは何に由来するのですか?
実験では白い部分と透明の部分とを切り離して、白い部分のみを観察に用いました。半透明の部分では分裂が行われていないとは記載されていましたが、分裂の有無だけで、こんなに色の差は起こりうるものなのですか?
まりさん

 実験を始める前に、根の構造はどうなっているのか参考書で調べましたか。生物の実験をする場合は、これから扱おうとする材料について、まず良く理解しておくことが大切です。根の構造については、一般的な植物のtext book に必ず説明されているはずです。高校の教科書でも記載があると思います。ぜひ勉強してください。
 ヒヤシンスに特定して説明するのではありませんが、根についての一般的な説明として読んでください。
 根の先端(根端)は外側に根端を覆う根冠があります。根冠は根端を保護するほか、重力を感知する働きがあります。(質問コーナー登録番号0080参照)。根端はその先端部分が分裂組織で、細胞分裂が盛んにおこなわれており、分裂帯と呼ばれます。分裂帯の後方は細胞が主として伸長するところで、縦に細長い細胞でできています。この部分は伸長帯(数mm程度)とよばれます。勿論これらの二つの部分は厳密に区分されている訳ではありません。もっと詳しく説明すると、根端の最先端で分裂を続けている細胞群は多くなく、これらの細胞の直ぐ後ろに、分裂がほとんど見られない静止中心と呼ばれる部分があります。この部分は根の組織分化と発達に重要な役割を担っていると考えられています。静止中心の後ろに細胞分裂が盛んにおこなわれる区域があります。先端からこの細胞分裂が盛んな区域がどのくらい離れているかは、種によって様々です。
 そこで、質問のことですが、白い部分と半透明な部分というのはおそらく分裂帯の部分と伸長帯の部分のことを指しているのではないかと思います。分裂帯の細胞は10 - 20μmくらいの小型の多面体の細胞で、核も大きく、液胞は発達しておらず、細胞質の密度は濃いため白っぽく見えるのでしょう。伸長帯の細胞は液胞ができた長い細胞が縦に配列しています。細胞質の密度も濃くありせん。したがって半透明に見えるのではないでしょうか。
JSPPサイエンスアドバイザー
勝見 允行
回答日:2012-07-19
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