一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

植物Q&A

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こちょこちょの木

質問者:   その他   痒み研究
登録番号1127   登録日:2006-12-11
百日紅(サルスベリ,こちょこちょの木)はくすぐると上の枝がゆれるとのことですが,そのメカニズムについては,解明されているのでしょうか?教えてください。さらに,ねむの木や昆虫を食べる植物もあるそうですが,これらの植物は,機械的刺激で植物が動くものと考えられますが,こちらのほうもメカニズムが解っていましたら教えてください.
痒み研究さま

 みんなの広場へのご質問ありがとうございました。担当の柴岡と申します。まず、こちょこちょの木をくすぐると上の枝がゆれるという、なかなかユーモラスな話ですが、そんなことは起こらないと思います。私も試してみますが、是非、痒み研究さんも試してみて下さい。次に「ねむの木や昆虫を食べる植物もあるそうですが,これらの植物は,機械的刺激で云々」とありますが、このままでは回答困難です。この中の主語に当たる部分については二通りの解釈が可能です。一つは、「ねむの木を食べる植物と昆虫を食べる植物」という解釈で、もう一つは、「機械的刺激で動くねむの木と機械的刺激で動く虫を食べる植物」という解釈です。始めの解釈だとした場合、“ねむの木を食べる植物”はありませんし、二番目の解釈だとしても、“ねむの木”は機械的刺激で動きません。ということなので、この主語を「機械的刺激で動くオジギソウと捕虫運動をする植物」に勝手に変えさせて頂くことにしました。そこでオジギソウですが、オジギソウについては、これまでにも質問を頂いており、回答もみんなの広場に載せてありますので、そちら(登録番号0821と登録番号0947)をご覧頂くことにし、今回は、捕虫運動をする植物についてだけお答えしようと思います。捕虫運動をする植物としてはハエジゴクが有名です。ハエジゴクは葉で虫を捕まえますが、ハエジゴクの葉はちょうど私達の手の手首を合わせて手の平を上に向け開いたような形をしています。その手のひらに当たる部分にはそれぞれ3本づつ毛が生えており、虫がその毛に触ると、両手を組み合わせるように葉が閉じて虫を捕まえるのです。虫が毛に触ると活動電位が発生しますが、そのことについては登録番号0939 をご参考下さい。
活動電位は葉全体に広がりますが、それだけでは葉は閉じません。虫が続けてもう一度、毛に触るともう一度活動電位が発生し葉全体に広がり、そこではじめて葉は閉じます。最近、葉を閉じさせる物質が単離されました。このような物質が十分に溜まると葉が閉まるが、一回の刺激では十分な量がたまらず、二回の刺激が必要なのでは無いかというようなことが考えられ始めています。葉が閉じるのは、活動電位の発生とその広がりをうけて、葉の表面側にある細胞の膨圧が低下し、細胞体積が減少するためだと考えられています。ムジナモも捕虫運動を行いますが捕虫運動の機構はハエジゴクと同じようなものです。
JSPPサイエンスアドバイザー
柴岡 弘郎
回答日:2006-12-21