一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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根における呼吸について

質問者:   教員   SATA_YUKI
登録番号1130   登録日:2006-12-14
「植物に水を与えすぎると、根は酸素不足になり窒息状態になる」とあったのです。とうことは、根自身に直接酸素を摂取したり、二酸化炭素を排出したりする機能があるということでしょうか?
 呼吸のガス交換は葉の気孔によって行われることは知っておりますが、葉以外に根もガス交換をしているということなのでしょうか?もし根が直接大気とガス交換をしているとすれば、根のガス交換をする構造等を含めて、そのメカニズムを教えていただけたらと思います。どうか宜しくお願い致します。
SATA_YUKI さん:

日本植物生理学会 みんなの広場 質問コーナーのご利用ありがとうございます。根の呼吸に関するご質問は標記の番号で受け付け、回答をお送りします。

根を構成する細胞も呼吸をしていますので、酸素を吸収し、二酸化炭素を排出しています。根の細胞への酸素(空気)の供給には二つの経路があります。根の表皮、内皮、維管束以外の細胞の多くは柔細胞で、ふつう大きな細胞間隙を持っています。この細胞間隙はお互いにつながり、葉の気孔内腔へと続いていますので、常に空気の供給源となっています。また、根の細胞間隙は、土壌粒子の間隙にある空気とも表皮の間隙を介して接しています。さらに、根の表皮細胞の細胞壁はクチクラやワックスなどの沈積がほとんどなく、土壌間隙から酸素を直接取り込んでいます。地上植物の根では、このような状態で可能な酸素呼吸で十分です。しかし、根が冠水した場合、土壌の間隙は水で満たされ、根の表面全体が水と直接接することになります。水に溶解している酸素を吸収することは出来ますが、根表面に接する水の酸素濃度はすぐに低下します。酸素の供給は、拡散に頼ることになりますが、水の中での酸素拡散の速さは遅いため土壌からの酸素の供給がほとんどなくなり、根は柔細胞間隙からだけの酸
素供給に頼ることになります。この状態が長く続くと、植物種によっては酸素欠乏をきたし「窒息状態」になります。しかし、ふつうは、このような状態になると、植物は根の柔細胞の間隙を大きくしたり、柔細胞の一部を積極的に破壊したりして、大きな通気組織を発達させ、地上部からの酸素供給を増加して個体の生存を図ります。ちなみに、地上部の気体交換は気孔を介するものが大きいことは間違いありませんが、気孔だけではなく、表皮細胞の表面や間隙からも酸素を吸収しています。夜になって、気孔が完全に閉じても呼吸は続いています。
JSPPサイエンスアドバイザー
今関 英雅
回答日:2006-12-19
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