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単生根粒菌のニトロゲナーゼ活性

質問者:   大学生   yura
登録番号1142   登録日:2006-12-30
共生している根粒菌についての講義で、レグヘモグロビンについての話がありました。その時は疑問に思わなかったのですが、土壌中で単生している時の根粒菌にはレグヘモグロビンがないのですか?その場合、ニトロゲナーゼは常に窒素固定を阻害されている状態なのでしょうか。
Yuraさま

 マメ科植物の根に共生して窒素固定を行う根粒菌(Rhizobium)が根毛に近づき感染すると、それがシグナルとなって根に根粒細胞ができ、この根粒細胞の中に根粒菌を含むバクテロイド(Bacteroids)が形成され、同時に細胞内にレグヘモグロビンが誘導合成されます。共生することによって根粒菌は根から窒素固定に必要なATP, 還元力(フェレドキシン)生産に必要な有機養分(呼吸基質)を得ることができ、さらに根粒細胞のレグヘモグロビンによってバクテロイドの周りの酸素濃度を低く保つことができます。一方、植物側は、土壌で最も欠乏しやすい、結合型の窒素を根粒菌から得ることができます。根粒菌はレグヘモグロビンを合成する遺伝子をもたず、これは植物側の遺伝子によって誘導合成されるため、共生していない根粒菌はレグヘモグロビンをもつことはできません。
ご質問にありますように窒素固定反応を触媒するニトロゲナーゼは酸素に非常に不安定な酵素で、ニトロゲナーゼは空気中で分以下の速さで失活します。そのため、マメ科植物に共生していない根粒菌は、(有機養分を与えられれば)細胞分裂、増殖することはできますが、窒素固定することはできません。
レグヘモグロビン(LHb)はヒト血液のヘモグロビンに比べ、酸素との親和性が高くオキシレグヘモグロビン(LHbO2)が酸素を50%解離する濃度は10-8 Mです。これはヒトのヘモグロビンの10-5 Mに比べ3桁も低く、根粒中のバクテロイドの周りはLHbO2によって常に酸素を供給できるけれども、そこでの遊離酸素の濃度は極端に低い状態に保たれています。一方、ニトロゲナーゼ反応に必要なATP(1分子のN2固定に16分子のATPが必要)を効率よく生産する好気呼吸は、バクテロイドにある根粒菌の原形質膜に結合しているシトクロムcオキシダーゼ(およびこれに連なっている電子伝達系)によって進行します。このオキシダーゼによる反応速度の50%飽和の酸素濃度は8 X 10-9 Mであり、極低濃度の酸素を利用することができます。こうして根粒菌細胞表面の酸素は、原形質膜に結合しているシトクロムcオキシダーゼによってほとんど使い尽くされ、根粒菌の内部にあるニトロゲナーゼは酸素にほとんど接触しない様になっていると考えられます。この様に、ニトロゲナーゼ反応に必要なATPを生産するための酸素を供給しつつ、酸素によるニトロゲナーゼの失活を巧妙に抑え、窒素固定を進行させています。
窒素固定菌にはこの他に、Azotobacterなどの好気性菌、シアノバクテリアの一部のように酸素を発生する光合成をしながら窒素固定のできるNostoc, 水生ゴケ(Azolla)に共生しているAnabaenaなどがあり、これらは根粒菌とは違った仕組みでニトロゲナーゼの酸素による失活を抑えつつ窒素固定をしています。
JSPPサイエンスアドバイザー
浅田 浩二
回答日:2007-01-18
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