一般社団法人 日本植物生理学会 The Japanese Society of Plant Physiologists

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デンプンの含まれる量の違いについて

質問者:   大学生   ボール
登録番号1150   登録日:2007-01-10
ジャガイモやサツマイモにはヨウ素液をかけることによって、きれいに紫色に染色されるのに対して、キウイやアボカドはうまく染色されませんでした。なぜですか?
もう一つ質問なんですが、なぜバナナには多くデンプンが含まれるのでしょうか?
ボール さん

本コーナーに質問をお寄せくださりありがとうございました。ヨウ素液によるデンプンの検出は、簡便で、感度も高いので、いろいろな材料で試みると興味ある結果が得られますね。

この方法で、ジャガイモやサツマイモの場合にデンプンが検出されて、キウイやアボカドの場合に検出されなかった理由について考えてみます。
1)デンプン含量の問題:
一般に、デンプンの含量、デンプン粒の形や大きさは植物の種類によって大きく異なっています。ジャガイモやサツマイモの芋(塊茎、塊根)は、デンプンを最終産物として高濃度に蓄積する器官(貯蔵器官)ですので、デンプンの検出はきわめて容易です。これに対して、キウイやアボカドの果肉は一時的にデンプンを蓄える組織であって、果実が熟するのに伴って(一般には、追熟)、デンプンは糖に変換されます。このため、デンプンの検出には果実の熟度が問題になります。
2)デンプン検出妨害の問題:
(1)キウイやアボカドの果肉には色素が含まれているので、ヨウ素デンプン反応を見えにくくする場合が考えられます。この場合には、色素抽出などの前処理が必要になります。
(2)キウイやアボカドの場合には、ヨウ素とデンプンとの反応による発色を妨害する物質(条件)の存在が考えられます。妨害には、ヨウ素を無効にする場合とデンプンの構造に変化を与える場合が考えられます。これらの果実には、例えばアスコルビン酸(ビタミンC)などの物質が多く含まれているので、そんなことが関係するかも知れません。化学を専攻されている方ですので、是非、調べてみて下さい。
キウイの果肉ではデンプン粒がよく観察されるようですので、ただヨウ素液をぶっかけるといった方法がすべての場合デンプンの検出に有効とは限らないのかも知れません。
一方、アボカドの果肉は特別で、重量比にして炭水化物の3倍ぐらいの脂質が含まれており、これがデンプンの検出を難しくしているかも知れません。

バナナの場合も、熟して行く(黒くなる)に伴って、デンプンが糖に変換され、果実は甘くなります。何故バナナにデンプンが多いかということはわかりませんが、デンプンを蓄積するのは甘い果実を作るための準備だと考えることが出来ます。熟した果実が甘いことは多くの場合に共通することです。
JSPPサイエンスアドバイザー
佐藤 公行
回答日:2007-01-18
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